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愛してるからこそ地獄行き 7
「スリッパでお前らを蹴ったら俺の足がかわいそうだろ」
引きつった声で蹴らないでと言われたが聞くわけない。
なんで俺に蹴られないと思ってるんだ、コイツら。頭がお花畑すぎるだろ。
仮に哉太が誘って今回のことがあったとしてもそれとこれとは別の話だ。
俺の知らない哉太を知っているような人間をどうして野放しにしていないといけないんだ。
今朝は哉太に会うことを最優先して放置しただけだ。
生徒会役員も親衛隊たちも身元が割れているのだからどうとでもなる。
だから先に哉太に会って話をしようと思っていた。
「まさか、お前たち俺のこと舐めてた?」
床に這いつくばって俺の機嫌を伺う双子は首を横に振る。
舐めてるだろう。
「俺が哉太をヤった相手に何もしないと思ってた? 哉太が誘ったなら許すと思ってた? 哉太が他人と寝たら手放すとでも思ってた?」
自己嫌悪を押し流すような怒りが湧き上がってくる。
俺はたぶん哉太以外の人間を虫けら扱いしていた。
目の前を通り過ぎたら不快だから払いのけたり煩わしく思うが基本的に意に介さない。
俺の視界に入らないように指示しておけば近寄っても来ないから昔に比べたら煩わされなくなった。
邪魔な小石を取り除いて歩くのを楽にすることもあるけれど基本的に同じ人間だなんて思っちゃいない。
だから、哉太が仲良くするようにいうのが理解できなかったし、気を遣わないといけない意味もわからなかった。
俺が哉太にするように周りに笑いかけても、今のまま笑うことも話すこともなくても変わりない。俺が話さない代わりに副会長や会計が周りと話をするし、俺に何かを求める外野は親衛隊たちが黙らせる。他人から何も求められてはいない。
役員たちも親衛隊も俺がどんな言動をとっても反応は変わらない。俺を通して俺じゃない何かを見ているだけだからだ。
哉太は周りに冷たいと俺を叱るけれど周りの反応と俺の態度は関係ない。
そもそも哉太に冷たい相手に対して俺が優しくする義理もない。
「俺と哉太のこと舐めてたからこういうこと出来んだろ?」
この程度のことで俺の愛がどうにかなると思ってるなら何もわかってない。
誰がどう計画を立てたにしても無意味すぎる。
生徒会役員と親衛隊幹部をまとめて排除するための仕掛けだと言われた方が納得する。
「二人いるなら片方死にかけても、もう片方がちゃんと喋れるから問題ないな?」
右でも左でも見分けがつかないから適当に蹴り飛ばそうとしたら生意気に避けた。
仕方がないので足をそのまま下に降ろして手の甲を踏みつける。鈍い音がしたので折れたかもしれないが悲鳴を噛み殺していたので大した痛みは与えられなかっただろう。
「スパイクがついている靴の方がよかったな。これはただの安全靴だから全然平気だろ」
「ひぇ……いえ、それで蹴られると骨が折れるんで……」
俺が手を踏みつけてない方が口を開く。
手を踏みつけている方は脂汗を流しながらすすり泣いている。
大きな身体に不釣り合いなこの姿を見たら優しい哉太は同情するのだろうか。
それともスッキリするのか。
「会長だって、それ、で、コンクリートに穴開けてましたよね?」
「あぁ、そうだな? だからどうした。哉太に触れられたんだから身体に風穴が空いても構わないだろ」
俺の言葉に冗談キツいとばかりに引きつった笑いを上げる双子。
まだ俺の怒りを理解しきっていないらしい。
自分たちの作り上げた嘘が露見していることも半信半疑だろう。
この双子はただ俺に対して本能的に怯えているだけだ。
敵わない相手に対して腹を見せて許しを請おうとしている畜生。
冷静にならないといけない。
俺はまだ哉太が見ているものに追いつけていない。
双子の持っている情報を吐かせる。
それが第一歩だ。
地獄へ続く道への一歩。
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