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好きな相手を好きな人 3
俺が淫乱ビッチでも頑張って合わせると言っていたから、対象が俺じゃないだけで雄大からすれば全部眼中にないのかもしれない。けれど、そういう問題でもない。前提から何から間違ってることを脇に置いても努力の方向性がおかしい。
「サミーは愛人にもしてくれないし、セフレを持ちかけても黙殺されたし」
「その根性が間違ってる。あの人がそんなものを受け入れるように見えるか?」
「間違ってても俺はサミーとエッチしたいのっ。好きない相手とエッチしたいのは普通じゃん」
会計の力いっぱいの言葉に淡々とツッコミを入れる不良。なぜか感動したように会計の名前を呼んで涙ぐむ親衛隊二人。叩きたい。動けたら思いっきりこいつらの頭を叩きたい。雄大がいたら全員蹴り飛ばしてくれるのに。どうしていないんだ。何このストレス空間。俺の精神をおかしくしたいなら高確率で成功している。頭がどうにかなりそうなほどムカつく。
俺の言葉を聞くつもりのない会計は不良となぜか通じ合うように会話をしている。イライラする。副会長に感じたものとはまた違う苛立ちだ。昨日も今日もクスリのことを抜きにしても一方的に言葉をぶつけられて会計は満足している。俺と会話をして分かり合おうという気はなく自分の意見を押し通している。自分の正しさを疑わない。自分の考えが一番。自分のことしか考えちゃいないクセに「雄大」「雄大」と口にする。
雄大は関係ない。お前の頭がおかしいのはお前のせいだ。いい加減にしろ。
俺の雄大を理由に使うな。
不良と会計は同じ相手を好きだから通じ合うものがあるのかもしれない。
方向性の違いがあっても同じ雄大好きの仲間として会話をしている。
それもまた何だか気に入らない。
俺だって雄大が好きだ。けれど、会計の気持ちは全く分からないし、不良の健気な気持ちは相手が雄大じゃなければ応援したい程度に好ましいと思っている。
でも、それと俺の今の状況は関係ない。
コイツらがどれだけ雄大を好きだろうが、どんな風に雄大を好きだろうが俺が拷問を受ける理由になんかならない。
片思いと両思いには埋められない深い溝があるのだろうか。
あるかもしれない。
それでも俺は認めるわけにはいかない。
雄大が俺を信じてくれて愛してくれているのなら尚更、雄大の愛が俺を傷つけるなんて認めない。
俺に危害を加えている人間が大義名分として雄大の名前を出すことは許せない。
この状況を間接的に雄大が招いたことだとしても直接的に俺に悪意を向ける彼らは雄大じゃない。
嫌わないで、離れないでと泣く雄大を覚えている。
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