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好きな相手を好きな人 6
俺は笑って喜ぶべきなのかもしれない。
助けに来てくれた彼らに礼を言うべきかもしれない。
けれど、そんな気持ちは湧き上がらない。
わんわんには礼を言いたいし、感謝している。
だが、彼ら三人に対しては何も思わない。
それは多分、いろんなことを確信しているからだ。
副会長はともかく不良が俺の前に現れた理由、それを素直に喜ぶことが出来ない俺はきっと性格が悪い。
「君さぁ、情報部の部長さん?」
会計の言葉に肩をすくめて学生服の男、村人Aはマスクを外した。
見たことのない顔だ。委員長や部長は容姿がいい人間がなることが多いけれど平凡な顔。俺が言うのもなんだけれど。
三年生なんだろうか。
見覚えがない理由を学年の違いだと考えていると否定も肯定もせずに情報部の部長は不良に目で合図を送る。
この二人の繋がりも分からない。
移動すると言いながら家探しをする不良と情報部の部長。
「会計の持ってるデータってどこ? 言わないならとりあえずPC系は全部壊しておくぞ」
「CD、DVD系もだろ」
不良の言葉に情報部の部長は「もちろん」と頷く。
副会長はハサミがかすってたからか頭を打ったからか壁にもたれかかって反応が鈍い。
汗が尋常じゃなく出ている気がする。大丈夫なのかと聞こうとする前に不良に声をかけられた。
「おまえ……金宮哉太! 自分が五月雨会長の弱みになっている自覚があるか?」
安全圏にいる外部からの説教ほど煩わしいことはない。野次と何ら変わりない。
不良が口にすることは聞かなくても分かる。すでに何千回と親衛隊から言われ続けたことの焼き直しだろう。
一日に三回も言われたことがある俺の存在が雄大に不利益になる理論。
勘違いしないでほしい。
雄大の不利益になる俺がいるんじゃない。俺のことが不利益だと思う親衛隊その他がいるんだ。
そりゃあ、過保護なところがあるのは自覚しているし、俺の意見になんだってYESと返すような雄大だから多少の距離はあった方がお互いの為だろう。
でも、雄大は俺から離れない。淋しいから悲しいから、恋しい以前に家族だから傍にいるのが普通なのだ。
「自覚があったら何なんだ? もっと自衛して完璧でいろ? 雄大に心配をかけるな? 雄大の欠点になるから近寄るな? じゃあ、お前、大人数で押えこまれてクスリ飲まされて拷問されて輪姦されてまた同じこと繰り返されかけてみろよ。完璧で冷静な対応を見せて見ろよ。……言っとくけど雄大に一回も勝ったことがないような相手に俺は負けない。普通ならな」
口に出して実感する。そう、今の状況は普通じゃない。
普通じゃないから味方として現れている不良に対してこんな言い方になる。心が尖っている。イライラしている。
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