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銃弾の装填 3

 分かってはいたけれど雄大は泣いて最低の気持ちになったのだろう。  チャットの文字だけでもわかる。気にしないように強がっている雄大を感じる。  だから、俺はそれで十分だと思う。雄大を痛めつけたいわけじゃない。  俺は俺の痛みを自分だけではなく雄大にも背負わせた。それを愛だというつもりはない。でも、これから先も一緒にいるなら雄大にも背負ってもらうしかない。俺だけで向き合えない事柄、俺が向き合うことを避けたい全て、俺のできないことは雄大がする。    それは俺たちの中で当たり前になっていた。説明する必要もないぐらい当然の役割分担。どんな時でも変わらない関係。雄大に苦痛を強いたけれど、変わらないものは変わらないのだと証明はなされた。   「おめでとう、ハッピーエンドだね?」    情報部の部長の言葉を無視して俺は天利祢奏さんに連絡を取る。  知らないことはほとんど存在しないという天利祢(あまりね)の持つ情報網。  人脈ではなく強制的に機械から情報を抜いているという噂を雄大から聞いた。  キシさんは否定も肯定もしなかったので天利祢という家が非合法な活動をしているのは確かだろう。  危ない相手だったり事実無根ならキシさんはやんわりと指摘や訂正をする。そういう人だ。    天利祢の持つ力、それを期待してたずねるのは一つ。  わんわんについての情報だ。  すぐに返ってきたメールは予想よりも長い文面で心臓が痛くなる。    これを見れば引き返せなくなる。  いいや、すでに確信している。  もう戻れない。  やり直しはいつだってきかないからこそ時間を大切なものだと思える。  雄大から距離を置いてお互い落ち着いて考えようと提案した時のことを思い出す。  俺の提案に雄大は泣き叫んだ。   『明日死ぬかもしれないのに哉太と一緒にいられないなんてイヤだ』    別に雄大が余命いくばくもないというわけじゃない。  明日に何があるか分からない、だから距離を置いて時間が解決することを待つなんて後悔が残るというのだ。  その考え方は俺にないもので少し衝撃だった。いつかなんとかなるだろう、ならないならどうしようもないと諦めて受け入れる。雄大はそうは考えない。    価値観の違いはそれぞれ当たり前に持っていることだけれど、兄弟のように密着して生活をし続けているのに俺と雄大は根本的なところで全く違う考えを持っていた。きっと両親たちが友人同士じゃなかったら俺と雄大は今のような関係にはならなかっただろう。    それは分かっている。  何が悪かったとか、どうしてこうなったとか、向き合うのは少し怖い。  心が痛んで神経が尖っていることを自覚しているからだ。    誰かに責任を押し付けてお前が居なかったらと怒鳴りつけたい衝動に駆られる。  雄大にそうしなかったのは愛があるからだし、理性が冷静な振りをしたがるからだ。  泣き叫んでヒステリックに物に当たり散らしたい気持ちがないわけじゃない。  先に雄大が泣いたから俺の情けなさも弱さも心の中押し込めた。

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