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第十章 オネスティ(music by Atsushi Hagio)5

 ベッドルームの扉がひらかれて、入り口で長身は影になっている。 「待ってるね」  先にシャワーなどを終えて身綺麗にしてそう言った文彦は、確かにベッドの上で背を向けて座って待っている。薄暗く調光された部屋で、淳史は後ろ手にドアをゆっくりと閉めながら、息を呑んだ。  頭からかけた白いタオルを指先でもてあそび、カーテンがわずかにひらかれた窓をぼんやりと見ている。白い額は、奥深くに少年の面影を秘めて、横顔は月光を受けたようにあえかに色づいている。  首を傾けて淳史を振り返り、ふいとタオルを腰まで落とした。  そこで完璧に一枚の絵画になった。背中から腰にかけてのハッとするほどのまばゆい白さ――そこに座って振り返った姿は、まるでアングルの描いた「グランド・オダリスク」のように一瞬の輝きを凝固して閉じ込めている。  大きな瞳は淳史への愛しさに満ちていて、黒目をじっとまぶたに引き付けて、見つめている。  淳史は見えない魔力に引っ張られるようにベッドへと上がり、片手でその栗色の髪を指先で巻いた。ふっと触れ合っただけの瞬間に、お互いにおののいた表情で視線を交わす。 「文彦が、いつもより綺麗で――びっくりした」  淳史は溜め息まじりに呟いて、長い指を栗色の髪へと差し込み、何度も梳いていく。淳史の目の前にいるのは、愛に満ちて漂う一匹の美しい生物だ。 「淳史」  たゆたう深い声色で名前を呼び、両手を上げる。 「少し、じっとしてて」  そう言うとやさしい仕草で、間近に座る淳史の額を撫で、てのひらで頬を探っていく。確かめるように耳朶を、首筋をくすぐるように触れて、文彦は無心な眼差しでうすく唇をひらいた。 「うん」  淳史は、文彦からやさしく触れられる心地良さに、静かに目を閉じた。額に幾筋か落ちた黒髪、端正な顔は落とされた照明の中で、くっきりとした陰影を描いている。  文彦はそれを今見たかのように不思議な想いで眺め、下ろされたまぶたにそっとくちづけた。 心は波打って満ち、引いてはまた寄せて、文彦の指先は淳史の裸体へと触れていく。  首筋からたどって鎖骨のくぼみを確かめ、彫像のようにしっかりとした裸体の肩、腕を確かめる。てのひらは胸をたどり、乳首をたどり、脇腹を経て、腕を回して背中を抱きしめた。 「淳史は……綺麗だ」  筋肉の引き締まった長身をてのひらで撫でながら、文彦はゆっくりと鎖骨にくちづけた。  何かを言いかけた淳史の唇を、キスでふさいで、尖った舌先でその唇をわずかに舐める。文彦の指先は、淳史の内股をかすめ、下腹をかすめていく。  淳史は思わずその舌先を唇で挟み、舌で絡ませた。それは激しさよりも、甘く溶けいるやさしさで、砂糖菓子を味わうように沈んでいく。  文彦は肌に当たった感触で、すでに反応している昂ぶりに気付いた。敏感な箇所の周りをやわやわとなぞっていたが、ゆっくりと少しずつ触れていく。 「文……彦」  淳史は耐えがたいように眉を寄せて名前を呼び、思わずほそい手首をつかんだが、愛撫は止まなかった。 「文彦」  淳史は白い体をベッドへと押し倒すと、その頬を両手で囲って、キスをくり返した。舌でノックすれば、唇はもう一度ひらかれて淳史を迎え入れる。何度も角度を変えてキスをし、舌で舌をなぞる。  どちらの呼吸も乱れて、どちらの吐息なのかも定かでなくなっていく。  その合間にも文彦のてのひらは、淳史の昂ぶりの先端を撫でたかと思うと、ふっと場所を外し、淳史を押し上げていく。淳史はやや焦燥の中で、体の下にある下腹へと手を伸ばし、半ば反応を見せている中心部へと触れた。  その瞬間に、ビクッと文彦が硬直した。動きは止まり、咽喉はのけ反って、息を呑んだまま呼吸は停止した。 「大丈夫か?」  淳史はハッとして文彦の顔を上から覗き込んだ。 「大――大丈夫」  かすれた声はちいさく、ぎこちなく微笑した顔は青白かった。 「大丈夫だよ。好きだから」  その表情は今にも儚く消えてしまいそうで、淳史は強張った太腿を、てのひらでやさしく撫でた。淳史の手が何度さすっても、その脚も下腹も強張っていて、力は抜かれずに微動だにしない。 「文彦」 「淳史、好きだよ」  非常な緊張の極限の中で、文彦の声はふるえている。  淳史は胸を打たれて、胸に襲った想いのまま、文彦の両手をすくい取り、何度もくちづけた。そうすると、文彦の体からふっと力が抜けていくのを見て取って、淳史は話しかけた。 「文彦の、背中にキスしたい」 「え……?」 「ずっと見れなかったし、触れなかったから」 「でも」  文彦は少し詰まった表情でためらったが、淳史の深い眼差しを感じて、ゆっくりとうつ伏せになった。引き寄せたタオルを腰にかけて、尻へと穿たれた刺青を隠した。 「ありがとう」  淳史がそう言うと、文彦はわずかに首を横に振った。  無防備にさらされた背中へと淳史が覆い被さると、文彦はぎゅっとシーツを強く握りしめた。 「体重は……かけないで……!」  速まった呼吸で、ふるえる声で文彦は懇願した。 「文……彦」  淳史は耐えがたいように眉を寄せて名前を呼び、思わずほそい手首をつかんだが、愛撫は止まなかった。 「文彦」  淳史は白い体をベッドへと押し倒すと、その頬を両手で囲って、キスをくり返した。舌でノックすれば、唇はもう一度ひらかれて淳史を迎え入れる。何度も角度を変えてキスをし、舌で舌をなぞる。  どちらの呼吸も乱れて、どちらの吐息なのかも定かでなくなっていく。  その合間にも文彦のてのひらは、淳史の昂ぶりの先端を撫でたかと思うと、ふっと場所を外し、淳史を押し上げていく。淳史はやや焦燥の中で、体の下にある下腹へと手を伸ばし、半ば反応を見せている中心部へと触れた。  その瞬間に、ビクッと文彦が硬直した。動きは止まり、咽喉はのけ反って、息を呑んだまま呼吸は停止した。 「大丈夫か?」  淳史はハッとして文彦の顔を上から覗き込んだ。 「大――大丈夫」  かすれた声はちいさく、ぎこちなく微笑した顔は青白かった。 「大丈夫だよ。好きだから」  その表情は今にも儚く消えてしまいそうで、淳史は強張った太腿を、てのひらでやさしく撫でた。淳史の手が何度さすっても、その脚も下腹も強張っていて、力は抜かれずに微動だにしない。 「文彦」 「淳史、好きだよ」  非常な緊張の極限の中で、文彦の声はふるえている。  淳史は胸を打たれて、胸に襲った想いのまま、文彦の両手をすくい取り、何度もくちづけた。そうすると、文彦の体からふっと力が抜けていくのを見て取って、淳史は話しかけた。 「文彦の、背中にキスしたい」 「え……?」 「ずっと見れなかったし、触れなかったから」 「でも」  文彦は少し詰まった表情でためらったが、淳史の深い眼差しを感じて、ゆっくりとうつ伏せになった。引き寄せたタオルを腰にかけて、尻へと穿たれた刺青を隠した。 「ありがとう」  淳史がそう言うと、文彦はわずかに首を横に振った。  無防備にさらされた背中へと淳史が覆い被さると、文彦はぎゅっとシーツを強く握りしめた。 「体重は……かけないで……!」  速まった呼吸で、ふるえる声で文彦は懇願した。 「文……彦」  淳史は耐えがたいように眉を寄せて名前を呼び、思わずほそい手首をつかんだが、愛撫は止まなかった。 「文彦」  淳史は白い体をベッドへと押し倒すと、その頬を両手で囲って、キスをくり返した。舌でノックすれば、唇はもう一度ひらかれて淳史を迎え入れる。何度も角度を変えてキスをし、舌で舌をなぞる。  どちらの呼吸も乱れて、どちらの吐息なのかも定かでなくなっていく。  その合間にも文彦のてのひらは、淳史の昂ぶりの先端を撫でたかと思うと、ふっと場所を外し、淳史を押し上げていく。淳史はやや焦燥の中で、体の下にある下腹へと手を伸ばし、半ば反応を見せている中心部へと触れた。  その瞬間に、ビクッと文彦が硬直した。動きは止まり、咽喉はのけ反って、息を呑んだまま呼吸は停止した。 「大丈夫か?」  淳史はハッとして文彦の顔を上から覗き込んだ。 「大――大丈夫」  かすれた声はちいさく、ぎこちなく微笑した顔は青白かった。 「大丈夫だよ。好きだから」  その表情は今にも儚く消えてしまいそうで、淳史は強張った太腿を、てのひらでやさしく撫でた。淳史の手が何度さすっても、その脚も下腹も強張っていて、力は抜かれずに微動だにしない。 「文彦」 「淳史、好きだよ」  非常な緊張の極限の中で、文彦の声はふるえている。  淳史は胸を打たれて、胸に襲った想いのまま、文彦の両手をすくい取り、何度もくちづけた。そうすると、文彦の体からふっと力が抜けていくのを見て取って、淳史は話しかけた。 「文彦の、背中にキスしたい」 「え……?」 「ずっと見れなかったし、触れなかったから」 「でも」  文彦は少し詰まった表情でためらったが、淳史の深い眼差しを感じて、ゆっくりとうつ伏せになった。引き寄せたタオルを腰にかけて、尻へと穿たれた刺青を隠した。 「ありがとう」  淳史がそう言うと、文彦はわずかに首を横に振った。  無防備にさらされた背中へと淳史が覆い被さると、文彦はぎゅっとシーツを強く握りしめた。 「体重は……かけないで……!」  速まった呼吸で、ふるえる声で文彦は懇願した。 「わかってる――そっとするから」  囁いた声は愛しさに溢れていて、背筋の真ん中をあたたかな手が静かに触れていく。それは清流のように首筋から腰まで下りていき、冷たい肌にぬくもりを広げていった。 「文彦の背中は、どうしてこんなに綺麗なんだろう?」  溜め息まじりに、淳史はやさしさのすべてを込めて、首筋から肩甲骨、背筋へと静かにキスを落としていく。 「大丈夫?」 「うん……」  まだ力の入っているこわばった肌を、てのひらで温めて、唇を押し当てて、そっと解いていく。隙間なく触れ尽くしてしまいたいように、止まない行為に、文彦はやや困惑して首をねじって振り返った。 「いつまで……するの?」 「ん……? 今までの分も全部。嫌か?」 「嫌じゃ……ない」  文彦はわずかに顔を赤らめて、シーツに頬を落とした。淳史が安堵した表情で首筋の後ろへとキスすると、文彦は瞳を閉じて、その体からは少しずつ力が抜けていった。淳史のてのひらと唇は、太腿から脚へと下りていき、文彦はやさしい心地よさの中で漂った。 「わッ」  思わず叫んだのは、淳史がかぷりと、足指を歯で軽くかじったからだった。 「な、何? 汚いよ――」 「食べたら美味しそうだと思って」 「や、やめて」  文彦が戸惑って足を引いたのを、淳史は残念そうに見つめたが、それ以上は追わなかった。するりと体をずらして伸び上がり、栗色の髪をもてあそび、耳朶を唇で挟みこむ。 「文彦の耳が美味しい」  何も応えられずに、文彦は目のふちから首筋までを赤く染めた。 「唇も、首も、背中も美味しい」  唇へと深いキスをしながら、てのひらで探っていく。そのままキスは首から背中へと押し当てられる。恥じらいの中で文彦の肌はゆるんでいき、やさしさの中で温められて高められていく。呼吸は深くなって、大きな瞳は霞がかかったように潤み出した。その変化を見てとって、淳史は囁いた。 「ここも」  淳史は背骨から腰へと唇をすべらせ、素早くタオルを払うと、尻を割りひらいて窄まりへとくちづけた。 「ッ!」  文彦が驚いて腰をねじると、その瞬間に淳史の指が、ゆるりと勃ち上がっていた昂ぶりへと指をすべらせ、蠢かせた。 「あ……っ」  思いがけず、ずくん、と走った甘い衝撃に、文彦は力が抜けてシーツの上へと突っ伏した。淳史は昂ぶりへの刺激を続けながら、後孔へと丁寧なキスをくり返した。 「やめて、汚い」  そう言えば止まると信じて文彦は言った。しかし、淳史の指先は粘液で濡れた昂ぶりを弄り、声は息が止まるほどやさしかった。 「痛い?」  文彦は戸惑いの中で首を横に振って、呟いた。 「恥ずか……しい」  視線を反らしたままに頬を染めた横顔に、淳史の唇から言葉が雪崩れた。 「文彦の全部が綺麗だ」  強く言った声に何も言い返せず、文彦は淳史のなすがままになった。腰に突き抜けるズキッとした甘い疼痛に、ぎゅっと瞳を閉じる。  それ以上は抵抗がないのを見て、淳史は後孔へとキスしながら、前の昂ぶりへをてのひらで包んで刺激を続けていく。 「……っ」  長い愛撫は、文彦がぐったりとするまで続いて、熱は渦巻いて白い体を染めていく。  淳史は指を後孔へとあてがうと、撫でた。 「指でしていい?」 「もう……挿れて、いいよ……準備してきたから」  息も絶え絶えにそう言うと、文彦はぐったりとした火照った体で仰向けになった。潤んだ瞳で淳史を見上げて、指は目の前の首筋をたどり、肩から脇腹をたどっていく。 「まだ――もっと感じてるところを見たい」  淳史は堰を切ったように、両手で力を失った白い脚を押しひらいて、その間へと身を沈めた。淡紅色のペニスをキスし唇で挟んで、すでにローションの仕込まれてあった後孔へと指をためらいなく押し進めた。この前に見つけた文彦のスポットを探し、指の腹でとらえて、ほどくように撫でた。 「あ……あぁっ!」  文彦の胸は跳ねて、体はびくんとふるえた。 「い、いや――それ、だめ……!」  顔を振って、腰をねじって、文彦は逃げようとしたが、脱力した体ではほとんど意味をさなさかった。  文彦の昂ぶりからは粘液が溢れて、口に含んだ淳史の咽喉へと流れていく。指先は後孔を押し広げ、なだめるように愛撫をくり返した。 「う、あ、あっ」  脱力した高まった体で、快楽から逃れることは難しかった。文彦の体は、ぴくん、ぴくんとふるえて、咽喉はのけ反った。指が増やされても、その熱は高まるばかりで、新たな波を呼び起こしていった。ゆっくりと広げられ、ほどかれて、文彦の呼吸は乱れて、甘く後を引いていく。

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