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7日目・嘘か本当か

「晴人、お疲れ様。ちょうどお湯が沸いたところなんだけど、何か飲む?」 重い足取りで家に帰ると、優しい香りと声が迎えてくれた。 「バイト先から色んな茶葉を貰ったんだ。晴人みたいにうまく組み合わせとかはまだ出来てないと思うけど・・・」 虎牙さんは僕の顔を見て、一瞬黙った。 「晴人、どうした?何があった?」 僕は小さく首を横に振る。 虎牙さんは少し考えると、僕をリビングのソファーに座らせて何かを淹れ始めた。 そして少し経ってから目の前にコップを置き、底が透けて見えるくらい無色に近い薄い水色の液体を注ぐ。 するとシャープだが強く 清々しい香りが部屋に広がる。 虎牙さんはコップにさらにレモン汁と蜂蜜をプラスして混ぜると、液体が薄いピンクと紫の中間のような色へ変わった。 「どうぞ。ほっとするよ」 色がちゃんと変化したのに満足そうにする虎牙さんに促されるまま、僕はさっそく液体を口に含み舌の上で転がす。 蜂蜜の甘さと花と独特の苦味が混じった味がする。 自分ではなかなか選ばないハーブティーに心が安らぐ。 「なんでラベンダーティーを選んだの?」 「ラベンダーには心を落ち着かせる効果があるから、それがピッタリかなって思って」 違った?と首を傾げる虎牙さんに笑ってみせる。 僕、そんなに酷い顔してたのかな。 「辛かったら話さなくていいから」 虎牙さんもラベンダーティーに口をつける。 「・・・ありがとう、虎牙さんは優しいね」 「晴人にだけだよ」 「・・・虎牙さん、1つ聞いていい?」 「俺で答えられることなら何でも」 「虎牙さんも、どんな理由があったとしても嘘 つかれたくないよね」 僕は両手でカップを包む様に持つ。 冷たくなっていた指に熱が移る。 「俺は・・・あまりつかれたくないな。つかれて気持ちがいいものではないし」 虎牙さんは空になったカップにおかわりを注ぐ。 「・・・でもそれが結果的にその人の為になる優しい嘘ならいいんじゃないかな」 虎牙さんは大丈夫だよと言うように僕に笑いかける。 「人間は何度でもやり直しがきく。してしまったことはしょうがないし難しいかもしれないけど、だからそんなに泣きそうな顔しないで」 僕はカップの中を覗く。 水面にひどい顔がうつっていた。 「虎牙さん、ありがとう」 「お礼は晴人の手料理でいいよ」 僕は虎牙さんの言葉に笑顔で頷く。 ・・・してしまったことはしょうがない。 あれからうやむやにして答えずに帰ってしまった僕は今度こそ クビかもしれない。 それでも明日、ちゃんと会って話そう。 「・・・虎牙さん。明日 僕が仕えてる人に虎牙さんの事を話してもいいかな」 「晴人の好きなようなして大丈夫だよ」 でも、と続ける。 「俺には嘘つくなよ?晴人には何でも話して欲しいし、頼って欲しいし、それに晴人になら困らせられても構わないから」 「優しいね、虎牙さん」 「晴人限定だけどな」 僕達は顔を見合わせて笑い合う。 いつの間にか心は軽くなっていた。 約束その2・・・嘘をつかないこと。

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