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「うあっ、あぁ……!」  二人の舌が根元から零の曲線をなぞる。先端に到達し、また根元に移動する。  何度もそれを繰り返しながら、俺は眼前にある翔宇の顔を見ていた。鼻先はくっついているし、少し舐める箇所を変えるだけで翔宇と舌が触れ合い、それだけで体が熱くなった。零のそれを挟んで、翔宇とキスしているかのような錯覚に陥る。俺にとっては堪らない行為だった。 「やぁっ、あ、翔宇くん、響希くんっ……!」 「零、すっげえ硬くなってるぞ」 「だ、駄目っ、二人でするのは駄目だって、っ……」  零の内股が痙攣している。 「響希、取り敢えず一度イかしてやってよ。俺ゴム取ってくる」  翔宇がベッドを下りた後、俺は零のそれを深く口に含んで思いきり音を立てながら吸い上げた。客からもよく褒められる、俺の一番の得意技だ。 「ああぁっ! うあっ、駄目っ! ひ、響希く……」  零が反射的に手で俺の頭を遠ざけようとする。その手を取ってシーツの上に押し付け、更に強引に吸いまくると、零は腰を浮かせながら悲鳴に近い声を上げた。 「やぁっ、もう無理っ! イきそ……俺、無理!」 「すげえな、響希」  ベッドに戻ってきた翔宇の手には、未開封のコンドームが二つ握られていた。 「イくっ……!」  零の体液が口の中で放出される。まだ吸引してる最中だったから、危うくそれを飲み込んでしまうところだった。 「はぁ……、あ……」  ティッシュに精液を吐きながら、荒い呼吸を繰り返している零に目を向ける。半開きになった瞳と唇を見る限り、本当に気持ち良さそうで俺も嬉しかった。 「響希くん超上手いね……。俺全然もたなかったよ」  ぐったりとベッドに横たわった零の頬を撫でる。 「そんなに良かったか?」  囁くと、頬を赤く染めた零が力無く微笑んで頷いた。 「よっしゃ。零が回復したら、次は俺らの番な」  言いながら翔宇が服を脱ぎ始める。 「………」  俺は瞬きすら忘れて翔宇の体に見入ってしまった。  学生の時に、例えば体育の着替えなどで幾度も目にしてきた翔宇の体。あの頃と比べてまた一段と引き締まり、程よいバランスで筋肉がついている。常連客の中川に毎週酒と豪華な食事を食わされてるくせに、腹は綺麗に割れていた。 「翔宇、お前結構いい体してんだな」  思わずそんなオヤジじみた台詞を口にしてしまった。 「響希が仕事行ってて俺が休みの日はさ、暇だからジム行ったりしてんだ。仕事柄、体は鍛えといた方がいいしな」  俺は家で簡単な筋トレをするくらいだからそこまで鍛えられてはいない。むしろ翔宇と比べたらだいぶ細いし、なんだか脱ぐのが恥ずかしかった。 「響希もほら、脱げよ」 「俺は……」 「今さら遠慮すんなって」  ジーンズと下着を同時に脱ぎ捨てた翔宇が、俺の方へ近付いてくる。どうしてもその部分が見られなくて、俺は顔をそむけた。 「ほれ、ほれ」 「や、やめろ……」  ……翔宇に裸を見せたのはこれが初めてかもしれない。修学旅行の入浴時なんかはわざわざ翔宇がいない時間を見計らって入っていたし、一緒に暮らすようになってからも絶対に翔宇の前では裸にならなかったからだ。 「響希って意外と肌白いんだな」 「………」  翔宇が感心した様子で俺を見ている。体中が熱くなり、なんだかもうどうにでもなれという気分になってきた。 「ゴム付けた? じゃ、響希から先どうぞ」  翔宇がベッドの端に座って煙草を咥える。  ここまできたら自棄だ──。 「零、上乗って」  仰向けに寝た状態で、俺の上に跨った零の腰を支える。気乗りがしないセックスの時はいつも騎乗位で乗っかってもらうのが俺の定番のやり方だった。もちろん常連客の時にそんな手抜きはしないが。  零が俺のそれを握り、自分の入り口にあてがいながら腰を下ろしてゆく。 「……大丈夫か?」 「っつ……響希くん、超大きい……ちょ、痛……」  尻を使うのは慣れているはずなのに、零の中は意外と狭かった。これも人気の理由の一つだろうか。 「俺が握ってるから、自分のペースで挿れてみろ」 「ふあ、あ……ん」  俺の胸に両手をつき、苦痛に眉根を寄せた零がゆっくりと俺を包み込んでゆく。 「あっ、あ……!」  一度奥まで入ってしまえば後はもう快感しか残されていない。自分から腰を振る零は本当にいい表情をしていた。俺の上でのけ反り、目尻に涙を溜めながら、まるで鳥が鳴くような声で喘いでいる。 「あぁっ、響希くん……!」 「零、気持ち良さそうだな。響希はどうだ?」 「すげぇ、いい……」  煙草を揉み消した翔宇が、自分に装着させるゴムの封を開けながら俺達を見ている。確かに零の体は極上の快感をもたらしてくれているのだが、俺にとっては、翔宇にセックスを見られていることの方がそれの倍以上に刺激的だった。 「あっ、あ……。気持ちいっ響希くん……」 「ああ、やべえ。待ってらんねえよ」  翔宇がせっかく取りだしたゴムを棚の上に置き、我慢ならない様子で立ち上がった。 「零、俺の口でして」 「ん……」  仰向けで寝ている俺の上を跨いで立った翔宇が、零の口に自身のそれを擦りつける。正直、下からのこの眺めは……やばい。 「んっ、ん……」  翔宇のモノを口に含みながら更に自分で腰を振るとなると大変だろう――俺は腰を浮かせて、下から零を突き上げてやった。 「ふ、あっ……すご……あ、あぁんっ」  だがそれは逆効果だったらしく、零は口でするのもままならなくなってしまったようだ。 「ちゃんとフェラしてよ、零」 「だ、だって……響希くんが、は、激し……からっ!」  仕方ない。本当に、仕方ない。 「翔宇」  振り向いた翔宇を、軽い手招きの仕草で誘う。 「えっ、響希がしてくれんの?」  答える代わりに口を開けてわざとらしく舌を動かすと、満面の笑みを浮かべた翔宇が俺の顔を跨いで膝立ちの姿勢になった。 「響希のテク盗もうっと」  その体勢で更に翔宇が腰を落としてくる。俺は枕の上に頭を乗せてから乾いた唇を舌で舐め、翔宇のそれを勢いよく頬張った。 「うぁっ、すげ……」 「ん……」  初めて口に含んだ翔宇のそれは、想像していたよりもずっとでかかった。上から容赦なく腰を振られ、苦しくて息ができなくなる。 「……クソ。翔宇、じっとしてろ」 「さっき零にしたバキュームのやつ、俺にもやってよ」 「やってやるから動くな」  俺は翔宇に舌を巻き付かせながら、伸ばした手で零のそれを扱いてやった。 「あっ、あ……!」 「響希、さすが。……すげえ気持ちいい」  ていうか、一番乗り気じゃなかった俺が一番働いてるのはどうしてだろうか。自分でもよく分からないまま、俺は翔宇のそれを思いきり吸い上げる。 「うおぉ、なんだこれっ……! やべえ……」 「ふあぁっ、響希くん……!」 「響希っ……」  翔宇と零の声が一緒くたになって、もう訳が分からない。  そうこうしてるうちに零の腰の動きが速くなり、俺も限界が近くなってきた。 「おい、先にイッた奴が夕飯奢りだぞ」 「よっしゃ。負けねえっ……」  呻くように応えた翔宇に不敵に笑ってみせ、再び目の前のそれを口に含む。  俺は仕事帰り。零はついさっき一度出してる。だとすると、一番限界が近いのは翔宇、お前だ。 「あぁっ、俺ヤバいかも……またっ……」  零、堪えろ。  俺は手の動きを緩め、代わりに頭を激しく前後させた。 「あ……危なかった、響希くんありがと……」 「き、汚ねえぞ響希っ……あ、うあっイく……」 「んっ……」  結局、俺の思惑通り翔宇が一番最初に果てた。 「ちくしょう、やられた……」 「イッた奴は指咥えて見てろ」 「響希にまんまとハメられた……クソ」  ぶつぶつ文句を言いながらベッドを降りる翔宇。 俺は体を起こして顔に付いた翔宇の精液を指で拭い、零を引っくり返して四つん這いにさせた。 「自分で扱けるか?」 「は、はい……あっ!」  何度も繰り返し、後ろから零を突き上げる。奥深くを突くたびに、零が弾けるような声で俺に応えた。 「俺もイきそ……零は?」 「ん。俺も……あっ、あ……イく……」 「出したばっかりなのに」 「だって響希くんがっ……あ、あぁっ!」  やがて殆ど同時に、俺と零は果てた。 「ぷはぁ」  ベッドに身を投げ出した零が、翔宇からティッシュを受け取る。零はそれを使って手に付いた自分の精液を拭い、外したゴムの口を縛っている俺を見て笑った。 「響希くん、超最高。お客さんが夢中になるのも分かりますよ」 「零も相当すごいと思うぜ。可愛かった」 「ふふ」  全裸のままで零と抱き合い、軽く口付けを交わす。 「なぁ。俺は?」 「早漏は黙ってろ」 「む、ムカつく……。俺、結局零に挿れてねえし。響希なんて仕事で散々ヤッてきたくせに、どんだけだよ」  むくれる翔宇を見てひとしきり笑った後、俺達は三人でシャワーを浴びた。 浴室も部屋と同様かなり広く、男三人で入っても窮屈な感じは全くしない。ブラインドが上げられた大きな天窓からは星空が見える。朝になったらあの天窓からたっぷりと陽が入ってくるんだろう。想像しただけで気持ち良さそうだ。 「零は相当稼いでんだなぁ。十八歳でこんないい部屋住めるなんて普通じゃねえぞ」  浴槽縁に腰かけて髪を洗いながら翔宇が言った。 「いや、結構ぎりぎりですよ。常連さんが減ったらすぐ引っ越さないと駄目なレベル」  零が手にしたシャワーヘッドを俺の体に向けて笑う。 「俺らも金貯めとかないとな。響希、今日からちゃんと貯金しようぜ」 「だったらまず、お前の浪費癖を直すんだな」  俺は零に体を洗ってもらいながら、天窓の向こう側の夜空を見て言った。  ……まだ胸が高鳴っていた。

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