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2.志郎と剣治の場合

夜。 それぞれの部屋に引っ込み、志郎は床に座る剣治の横に寄り添い、犬のように伏せていた。 まぁ、体が狼なのだから、仕方がない。 時折、剣治が耳の後ろや首の周りを掻いてくれ、志郎はその気持ち良さに目を細める。 けれど同時に、どうしようもない衝動が、志郎を落ち着かなくさせた。 「志郎……? どうかしたのかい?」 『いや……』 志郎の異変を敏感に察知した剣治に、やましさから顔を背けた志郎は、歯切れ悪く言葉を濁す。 剣治は志郎の首に腕を回して、その柔らかい毛並みに頬を押し当てる。 「何でも言ってよ、志郎。僕にできる事なら、何でもするから、ね?」 『剣治……』 抱き締められたまま、志郎は首を巡らせ、剣治の額に顔を擦り付けた。 「どうしたの? やっぱり、不安?」 『それもあるけど……――してぇ……』 「え?」 ぼそっと呟いた志郎に、剣治は少し体を離して、首を傾げて見せる。 志郎はまた顔を背け…… 『剣治と……交尾……してぇ……』 すぐ近くに愛しい人がいるのに、獣の足では抱き締める事もできない。 ある意味、生殺しだ。 「志郎……」 『……なんてな。言ってみただけだから、気にすんなよ』 少し戸惑った顔をする剣治に、志郎は冗談めかして笑う。 と言っても、狼の顔では、剣治にしか違いが分からないだろうが―― 不意にクスッと笑った剣治は、優しく志郎の頭を撫でた。 「良いよ……志郎なら」 『は……?』 言われた意味が分からず、志郎は茫然と剣治の顔を見詰める。 「交尾、したいんだろ? まずはどうしたら良いか、教えて?」 『本当に……良い……のか……?』 躊躇(タメラ)う志郎に、剣治はにっこりと笑う。 「もちろん。……僕も、志郎としたい」 『剣治……』 どこかすがるように、肩に顎を乗せてきた志郎を、剣治は優しく抱き締める。 『……愛してる、剣治』 「僕も、志郎を愛しているよ」 軽く体を離した志郎が、嬉しそうにパタパタと尻尾を振りながら、剣治の頬をペロペロと舐めた。 そのくすぐったい舌の動きに微笑み、剣治は志郎の頭を優しく撫でて、その鼻先にキスをする。 『剣治……自分で解してくれるか? 今の俺の手じゃ……剣治を傷付けてしまうから』 「あぁ……分かり……ました……」 顔を赤面させた剣治は、おずおずと頷いて、ゆっくりと服を脱いだ。 確かに、獣の手では入口を解す事などできない。 けれど付き合ってまだ間も無い剣治に、その手の経験がある訳も無く、自分で解すのも初めてだ。 しかも志郎に間近で見られているなんて、恥ずかしくて仕方がない。 それでも『志郎のため』と決意を固めた剣治は、志郎の前に産まれたままの姿を曝した。 それを志郎が、ジッと見詰めている。 「あっ……やだ、志郎……そんな……ジッと、見ないで……」 とたんに羞恥が込み上げてきた剣治は、カアッと赤面して、モジモジと太股を擦り合わせた。 ニヤリと牙を剥いた志郎が、ククッと低く笑う。 『別に良いだろう? これから、交尾しようってんだからよ……』 「そ……それは、そうだけどぉ……」 情けない声を出す剣治が、体育座りのように膝を抱えて、床に縮こまる。 もう耳まで真っ赤だ。 また志郎が低い声でククッと笑う。 『おい、それじゃ何もできねぇだろ? ゆっくりと足を開いて……俺に見せてくれ』 少し躊躇った剣治は小さく頷き、恐る恐る志郎の前で足を開いていく。 志郎が、剣治の中心をジッと見詰める。 『もう立ってんじゃねぇか……可愛いなぁ、剣治は……』 静かに歩み寄った志郎が、緩く天井を向いた剣治のモノに鼻を寄せ、フンフンと臭いを嗅ぐ。 もう声も出せない剣治は、ギュッと目をつぶってその羞恥に堪える。 チラッと剣治の顔を見上げた志郎が、ペロリと剣治のモノを舐め上げた。 「あぁっ……!」 いつもと違う少しザラついた舌の感触に、剣治の背中が粟立つ。 フッと鼻で笑った志郎は、さらにペロペロと剣治のモノを舐め続けた。 「ふあ……やんん……」 首を仰け反らせた剣治は、後ろに手をついて、快感にビクビクと震える。 元々、志郎は舌使いが巧みなのに、獣のザラつく舌がさらに官能を煽った。 もうガチガチに硬くなった先端から、トロンとした蜜が溢れ出し、志郎の舌にさらわれる。 「んんっ……しろ……も、イくぅ……」 舌先でカリをなぞっていた志郎は、あっさりと舌を離し…… 「ふひゃ、あっ!」 急にパクンと先端を咥えられ、剣治の身体がビクンと跳ねた。 歯は当たっていないが、口の周りに生えた固くて短い毛が、根元をチクチク刺激する。 上顎と下顎に緩く挟まれた男根が、志郎の舌に舐め転がされ、剣治の口からは絶えず喘ぎ声が上がった。 「あぁん……しろ……もうイくっ! ……イくぅ……あぁっ!」 ひときわ甲高い声を上げた剣治が、ビクンッと身体を震わせ、志郎の喉奥に熱い飛沫を放出する。 それを音も無く飲み込んだ志郎は、口端から零れた白濁を、美味しそうにペロリと舐め取った。 身体を突き抜けるような快感の余韻に浸り、荒い呼吸を繰り返す剣治は、天井を仰いで身体をプルプルと震わせる。 喉奥でクックッと低く笑う志郎が、もう一度口の回りをペロリと舐めた。 『け~んじ~? もうヘバったのか?』 「んん……大丈夫……だよ……」 恍惚とした顔で微笑む剣治の頬に、志郎が気遣うように優しく鼻先で触れる。 「次は……どうしたら、良い……?」 『……指に唾液を絡ませて……後ろ、濡らして?』 いよいよという行為の指示に、剣治はビクッと身体を震わせ、ゴクリと唾を飲み込んだ。 初めての行為に、どうしても緊張してしまうが、剣治は素直にコクンと頷く。 恐る恐る指先を咥えた剣治は、唾液をたっぷりと乗せた舌で、ゆっくりと自分の指を濡らした。 いつも志郎がしている様子を思い出しながら、まんべんなく、丁寧に、しっとりと…… 「ん……ふぅ……」 時折口の端から零れる吐息が卑猥で、背徳的な感じがするのに、それが逆に剣治の興奮を煽る。 恐らく剣治は無意識なのだろうが、トロンとした目で頬を赤く染め、熱心に指をしゃぶる様は、ひときわ蠱惑的(コワクテキ)だ。 『そんなもんで良いぞ? ……ゆっくりと、後ろに指を入れろ……』 待ちきれないと激しく尻尾を振りながら、志郎は言い聞かせるように、ゆっくりと指示をする。 小さく頷いた剣治は、十分に唾液で濡らした指先を、前から恐る恐る股間へ持っていく。 そして、腫れ物に触るようにそっと、自分の秘部に触れた。 「ん……」 まだ入れてもいないのに、剣治の身体がビクリと震えて、小さく息を呑む。 『大丈夫か?』 急に尻尾をダランと下ろした志郎が、気遣うように剣治の顔を見詰める。 剣治はコクンと頷き、一度深呼吸をして、ゆっくりと指を差し込んだ。 志郎に、我慢をさせたくない。 けれど、ガチガチに緊張した剣治の身体は、指一本さえなかなか呑み込んでくれなかった。 苦痛に顔を歪ませた剣治が、唇を噛み息を詰める。 『力抜けよ、剣治……いつも言ってるだろ……?』 優しく言い聞かせる志郎が、剣治を落ち着かせるように、軽くペロペロと頬を舐めた。 そのくすぐったさに、剣治が小さく笑う。 もう一度深く息を吸い、静かに息を吐きながら、ゆっくりと指を差し入れた。 「んっ……はぁ……」 詰めそうになる息を懸命に吐き出し、やっと根元まで指を咥え込んだ。 『良い子だ……剣治』 「んぅ……なんか、変……な、感じ……」 年下の志郎に『良い子』よばわりされた事も気にせず、早くも息を上気させた剣治は、ぼんやりと志郎を見詰める。 『指、ゆっくり動かして……剣治の気持ち良いトコ、探してみ……?』 コクリと頷いた剣治が、言われた通りに指を動かし、自分で内側を擦った。 「んっ、ふぅ……はぁ……んく……」 初めて触る秘所は、生暖かくて、唾液のせいかネチョッとしている。 正直、嫌悪しか感じられない。 志郎に解されている時はいつも、これでもかと言うほど掻き回され、快感に震えるのに―― 志郎は『気持ち良い所を探せ』と言ったが、どうしても感触が気持ち悪くて、指を動かせない。 なんで志郎は、こんな気持ちの悪い物に、平気で触れられるのだろう? けれど、しっかり解さなければ、志郎と交尾(セックス)できない。 気持ちばかり焦る剣治を、志郎はしっかりと見抜いていた。 『剣治……俺の指を想像してみろ……』 「え……? 志郎の、指……?」 戸惑い首を傾げる剣治に、志郎は耳元に口を寄せ、低く掠れた声で囁く。 『俺は……いつも、どんな風に、剣治に触ってる……? どんな風に、俺は指を動かしている?』 「あぁ……い、いつも……志郎は……」 まるで催眠術に掛けられているようだ。 志郎の甘い囁きが脳に浸透していき、愛撫される時に秘部で感じた指の動きが、剣治の頭と身体を支配していく。 「志郎の……指……」 ぼんやりと呟いた剣治は、記憶の中で鮮明に動く志郎の指をなぞるように、ゆっくりと秘部を掻き回す。 「うぅっ……ふぅ……」 さっきまであんなに嫌だったのに、グチュッグチュッと響く卑猥な水音に興奮して、快感に息が上がる。 さっきイったまま、力無く垂れ下がっていた自身も、少しずつ上を向き始めていた。 指一本では、もう刺激が足りない。 『……そろそろ、指を増やしてみろ』 志郎の指示に頷き、剣治は指をもう一本、ゆっくりと挿入した。 二本に増えた指で、入口を広げるようにクパッと開ける。 「あぁっ……はあ……」 広げられた入口が、もっととねだるようにヒクヒク震えた。 剣治は快感で天を仰ぎながら、志郎の指の動きをマネして、入口をゆっくりと揉み広げる。 グチュッグポッという水音は、いよいよ激しさを増して、快楽の中へと誘う。 それでも、まだ、刺激が足りない。 『アレの裏側……探ってみ……?』 志郎に言われるまま、剣治が手前に指をもっていくと―― 「ん、あぁっ!」 指先がシコリに触れた瞬間、今までに無く強い快感が背中を駆け上がり、感電したように身体が震えた。 ようやく見付けたシコリを指先で挟み、震わせ、捏(コ)ね繰り回す。 「あんっ! ふあっ……あぁっく……っ!」 剣治の身体がガクガクと震え、喘ぎ続ける口の端から唾液が溢れ出る。 もう気持ち良過ぎて、指が止まらない。 不意に、志郎がククッと笑う。 『そんなに気持ち良いか? け~ん~じ?』 志郎に呼ばれて顔を向けた剣治は、ビクッと身体を震わせた。 志郎が面白そうな目で、真っ直ぐに剣治を見詰めている。 「あぁ……しろ……やぁ……見ない、でぇ……」 急に凄く恥ずかしくなってきた剣治は、ギュッと目を瞑(ツブ)り、真っ赤になった顔を隠すようにうつむいた。 また志郎が、さもおかしそうにクックッと笑う。 『ホントかわいいなぁ、剣治は……恥ずかしくても、手は止めんなよ?』 「うぅ……しろ……しろぉ……」 志郎に言われるまでもなく、剣治の指は刺激を求めて止まらない。 その上、志郎に見られていると言うのに、凄く興奮してしまう。 (僕が、こんなにふしだらだったなんて……) 自分の新たな一面に困惑しながらも、志郎が相手なら……と、剣治の胸が熱く鼓動を刻む。 「あっふ……あん……」 さっきから全然触れていない自身も、すでに下腹部に付きそうなほど頭をもたげ、先端からダラダラと蜜を溢している。 「あん……はん……」 自ら指を四本に増やした剣治は、滑り落ちてきた蜜を絡め取り、入口を濡らすように擦り付けた。 ヂュクヂュブと、卑猥な水音が増長する。 フッと志郎を見た剣治は、毛で被われた部分より長く伸びた獣の雄に、思わずゴクリと喉を鳴らした。 人のモノより赤く、先が尖っている―― アレに貫かれたらと思うと、剣治の胸が熱く高鳴っていく。 もう指では満足できなくなったのか、グッショリと濡れた秘部が、せがむようにキュウキュウと指を締め付ける。 「ふあぁん……も……欲しぃ……しろぉ……!」 感情が高ぶっているのか、剣治の目から熱い雫が溢れ出し、いく筋も頬を濡らした。 『たく……泣くほど欲しいのか?』 口では呆れたように言いながら、志郎は優しく剣治の涙を舐める。 剣治は恥も外聞も捨てて、コクコクと頷いた。 「あんん……しろ……おねが……」 『ククッ……ずいぶんおねだり上手になったなぁ……剣治?』 少し頭を下げた志郎が、ご褒美(ホウビ)と言うように、剣治の肉棒をペロリと舐める。 剣治の身体がビクビクと震えた。 「あぁ……しろ……しろ……」 泣いて懇願する剣治に、志郎が満足そうにフーッと鼻を鳴らす。 『しょうがねぇなぁ……四つん這いになれよ』 小さくコックリと頷いた剣治は、吸い付いてくる秘部から指を抜き、言われた通り四つん這いになった。 広げる物の無くなった入口が、早く早くと熱を求めて、ヒクヒク震える。 けれど、後ろに回った志郎は、フンフンと臭いを嗅ぐばかりで、欲しいモノを入れてくれない。 ……もしかして、何か臭うのだろうか? 「……志郎?」 『剣治って、良い臭いするよなぁ……剣治の体臭だけで興奮する』 低い声で囁いた志郎が、濡れた舌でペロッと入口を舐める。 「ひあんっ!!」 獣特有のザラついた舌で舐め上げられ、頭を跳ね上げた剣治は、身体をゾクゾクッと震わせた。 志郎がククッと笑う。 『ホントかわいいなぁ、剣治……』 「あぅ……しろ……」 涙目の剣治が、避難の声を上げる。 剣治の欲しいモノを、ちゃんと分かっているはずなのに、志郎は意地悪く笑うばかりで与えてくれない。 「しろ……もう、ちょうだぁい……」 『もう少し我慢な』 無情にもそう言った志郎は、剣治の入口をさらに濡らすように、ペロペロと激しく舐め回した。 「あん……はぁん……しろぉ……」 快感に背中を仰け反らせた剣治が、喘ぎっぱなしで閉じられない口の端から、ツゥーと唾液を溢す。 次第に剣治の腰が揺れ始め、ビクビクと震える男根の先からも、白濁の混じった液がダラダラと零れ落ちていく。 「やぁ……しろ……もう、入れてぇ……」 早く志郎の熱いモノで貫かれたい。 身体の奥が疼く。 「あぁん……しろ……しろ……ちょうだぁい……」 『そんな焦るなって……痛いのはお前なんだぞ?』 優しく言い聞かせようとする志郎に、剣治はイヤイヤと首を振った。 「痛くても良い……! 痛くても良いからぁ……しろ、おねが……」 もう何を言っているか、分かっていないだろう。 ふしだらに腰を振ってねだる剣治に、志郎はゴクリと生唾を呑んだ。 『剣治、すんげぇエロ……けど、もう少し濡らしてぇなぁ……あぁ、アレがあったか?』 不意に剣治の側から離れた志郎が、ベッドの枕元に前足を乗せ、何かを咥えて持って来る。 剣治が受け取ったそれは、初めてセックスした時に使った、ローションのチューブだった。 『それ入れて』 「え……」 あれほどいやらしく誘っていたのに、初めての時を思い出して、剣治は少し照れた。 けれどゆっくり深呼吸をして、チューブの先についた細い管を、恐る恐るお尻の穴に差し込む。 「んん……ふぅ……」 無機質な管の感触に息を詰め、注ぎ込んだ液体の冷たさに、剣治の身体がプルプルと震えた。 早く志郎の熱塊を入れて欲しい。 『少しだけ、指で慣らしてな?』 「……うん」 小さく頷いた剣治は、志郎の指示に従順に従い、またゆっくりと自分の入口に指を入れた。 「あぁっ……ふぅ……」 グッショリを通り越してバシャバシャに濡れた入口が、待ち切れないと言うようにヨダレを零し、剣治の指を咥え込む。 その淫靡な姿に、志郎の雄も熱くたぎって、もう張り裂けそうだ。 早く剣治の中に突き刺したい―― 「しろ……?」 『もう良いぞ』 やっとお許しがでて、剣治は嬉しそうに指を抜き、ゴクリと喉を鳴らした。 前足でカーペットを蹴った志郎が、剣治の腰に前足をつき、後ろ足で立った反動で剣治を貫く。 「ああああぁぁぁっっ……っ!!!」 一気に最奥まで突っ込まれた強烈な快感に、剣治の男根が、勢い良く熱を放出した。 あまりの衝撃に剣治の頭は真っ白となり、ブルブルと痙攣する身体が、ようやく与えられた志郎の雄をキューッと締め付ける。 『………大丈夫か? 剣治?』 志郎が恐る恐る聞くと、剣治は壊れた人形のように、カックンカックンと何度も頷いた。 「あぁ……しろ……い、良いぃ……」 まだ余韻から覚めない剣治が、荒い呼吸の合間に、震える声で呟く。 志郎からは見えないが、うっとりととろけるような顔をした剣治が、興奮する犬のようにハァハァと荒い息をしていた。 『剣治……』 「あぁん……!」 小さく囁いた志郎が、下を繋げたまま、剣治の背中に覆い被さる。 その時、中を満たす肉棒の角度が変わり、剣治は甘く喘いだ。 背中に触れる志郎の毛皮が、少しチクチクして、なんだかくすぐったい。 剣治の耳に、志郎の熱い息が触れた。 『ありがとう……愛してるぜ、剣治』 志郎の低い声に、剣治の身体が喜びで震え、秘部がキュッと締まる。 「しろ……僕も……愛してゆ……」 快感に溶けた剣治が、少し舌足らずな口調で、志郎に返す。 そう言えば、志郎が剣治に渡したローションには、少し媚薬成分が入っているんだった…… 『……そろそろ動くぞ? 大丈夫か?』 剣治がコクコクと頷く。 「早く……ちょうらぁい……」 夢見心地のような剣治に少し笑い、志郎はまた剣治の腰に前足を乗せた。 それが丁度飛び乗る時の反動に似て、剣治の奥深くに志郎の雄が突き刺さる。 「あん……!」 その快感が過ぎる前に、志郎は前後に腰を揺すり、マウンティングを始めた。 十分に濡れている剣治の秘部は、志郎の雄を迎え入れる度にジュボジュボ、グプグプッと激しい水音を立てる。 そして志郎の雄が出て行く時は、絡み付いたローションが掻き出され、剣治の太股に伝う。 それさえも、剣治は快感と捕らえているらしい。 「あぅ……しろ……もっとぉ……はぅん……」 悦楽に喘ぐ剣治の声が、雌犬の鳴き声のように聞こえて、志郎の興奮をさらに煽った。 雄に熱が集中していく。 『剣治……少し……我慢、しろよ……』 志郎が根元まで雄を差し込むと、身体をブルブルと震わせた。 「あ……なに……? 大き、く……」 挿入された根元がゆっくりと膨らみ、剣治の入口を目一杯押し広げ始めた。 「おほ……おぉ……!」 少しだけ痛みを伴う快感に、剣治の身体がビクビクと震えて、開きっぱなしの口からヨダレが滴る。 シコリに触れるか触れないかの所まで膨らんだ雄が、ビクビクと小刻みに震え、剣治の中に勢い良く熱を注ぎ込んだ。 「あおおおおぉぉぉぉぉおんッッ!!!」 目が回るような強い快感に、顎を仰け反らせた剣治が遠吠えを上げる。 ギチギチにはめ込まれた膨らみを、剣治の内肉がキューキューと締め付けた。 そして立ち上がりかけていた先端から、ドピュッドピュピュッと断続的に白濁を飛ばす。 『剣治……大丈夫か?』 「あぁ……あちゅ……おにゃか……しろで、いっぴゃい……」 剣治がコクコクと頷きながら、陶酔した声で舌足らずに呟く。 そんな剣治の恥体に、志郎はゴクリと唾を呑んだ。 元々、犬科の交尾は、一度達した後も、三十分は興奮が収まらないのだ。 志郎もまだまだ物足りないが、剣治に無理をさせたくもない。 志郎は前足を曲げて首を伸ばし、剣治の頬をペロペロと舐めた。 「んんっ、ふうぅ……しろ……」 軽く身悶えた剣治が、うっそりと志郎を振り返り、口から垂らしていた舌をペロッと舐める。 ゾクッとしながらも志郎が好きにさせていると、剣治はキスをねだるように、ペロペロと志郎の舌を舐め回した。 志郎の舌の表面も裏も、先から輪郭も全て、余す所なく舐め上げる。 これはこれで気持ち良いらしく、志郎はうっとりと目を細めたが――剣治はやはり物足りない。 志郎の舌を裏側から舌で掬(スク)い上げた剣治が、そのままパクッと咥える。 これにゾクッときた志郎は、快感にブルリと身体を震わせた。 当然それは、繋がっている剣治にも伝わり、思わず剣治は志郎の舌を解放してしまう。 志郎は安堵のため息をついた。 『まったく……どんだけ俺を虜(トリコ)にすれば、気が済むんだ?』 「ムゥ……最初に僕を虜にしたのは、志郎の方じゃないか~」 呆れた声で軽口をたたく志郎に、剣治が軽く唇を尖らせる。 一度離れて行こうとした志郎を、剣治は必死に追い求めた。 志郎の優しさに触れる度、前世とは何も関係無い愛しさを、剣治は感じていたのだ。 それは、これからも切れる事のない絆―― 『剣治……これからも……一緒にいてくれるか?』 「当たり前じゃないか、志郎……これから先も、ずっと一緒にいさせて?」 にっこりと笑い合った二人は、貪るように交尾を続けた。 志郎の雄が栓になり、剣治の内に溜まっていく熱が、妊娠のように下腹をポッコリとさせるまで―― 何度も絶頂に達した剣治が、白濁を出し尽くすまで―― 三十分をとっくに超えて、二匹は互いへの愛を貪り合った。 「あぁん……しろ……も、出な……あっあっああああぁぁぁっ!!!」 チロッと最後の白濁を出し尽くした剣治が、グッタリと上半身を落とす。 高く上げたままのお尻から、やっと細く戻った志郎の雄が抜かれ、栓の無くなった入口からは、バシャーッと志郎の出した精液が溢れ出す。 「ふあぁ……はあ……」 それだけで感じた剣治が、もう何も出ない自身を、ビクビクと震わせた。 「剣治……大丈夫か?」 さすがに息を弾ませた志郎が、心配そうに剣治の顔を覗き込み、剣治はうっとりと微笑んだ。 そしてどちらからともなく、しっとりと唇を重ねて、深く深くキスをする。   ☆   ★   ☆

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