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七
木鳴弘文が「久道 、悪ふざけがすぎる」とオレをにらみつけながら言う。
もちろん久道というのはオレではなくヤる気まんまんになってくれた風紀委員長の兄のことだ。オレに精液をくれるありがたい人。
この状態のオレに言うのではないあたり木鳴弘文は酷い。
見つめ合っているにもかかわらずオレたちの距離は他人だった。
「康介くんが本気なら俺だって本気」
久道さんはお兄ちゃんと呼ばれたい変態であっても軽薄でも軽率でもない。
親切で良い人だからこそ伸ばした手を拒絶しないでくれる。
オレが年下だから、弟のクラスメイトだから、中学からの付き合いがあるから、甘やかしてくれる。
「オレは本気です。センパイとして生徒会役員室をこういったことに使うなと言いたいんですか? 誰も来ないしいいじゃないですか。それにセンパイは言えた義理じゃないでしょ」
木鳴弘文に敬語を使う気持ち悪さ。
今までいくら年下だからわきまえろと言われても他人行儀になるのが嫌でセンパイ扱いなんかしなかった。
他人行儀も何も他人なのを理解していなかった。
「そうだよ。ヒロだって自分の親衛隊とイチャついてたじゃんか!」
「久道と一緒にするな。俺はホモじゃねえ」
吐き捨てると入り口から木鳴弘文が近づいてくる。
身構える間もなくオレは頭を思い切り叩かれた。
暴力的な行動は今に始まったことじゃない。
以前から蹴られたり叩かれたりしていた。
でも、気にならなかった。
そういうコミュニケーションの仕方をする人なんだと思っていたからだ。
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