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十一
口からこぼれた言葉がなんであったのかは覚えていない。
ただ木鳴弘文の視線が恐ろしかった。
気が付いた時には手を引っ張られて彼の部屋に連れ込まれ、犯された。
強姦だと思うよりもまず先に生命の危機を感じた。
これからオレは殺される。
そう思ったのは痛みではなく襲いかかってくる熱量が異常だったから。
茶目っ気がありながらもクールで真面目に生徒会長として活動をしていた木鳴弘文の見たことのない顔。
オレではなく転校生は知っているのだろうと思うと不快感があって抵抗した。
自分が何を求めてどうしたかったのか今ではあいまいだ。
逃げたかった、離れたかった、そのためだけの手段だったのに胸が痛くてたまらない。
好きな相手と体を重ねるものだなんて初めから思っていない。
自分に課せられた義務に感情は乗らない。
転校生が来るまでは木鳴弘文は自分の所有物だと思っていたので木鳴弘文の子どもは自分が産むものだと確信していた。
妄想なのだと冷静になればわかる勝手な感覚をオレはなぜか信じていた。
自分が木鳴弘文の子どもを産めることが誇らしく自分の身体の作りに感謝した。
出会うべくして出会ったのだと数年間ずっと幸せだった。
今では全部、実感の湧かない過去の話。
「……っ、ひぃ、ぐっ」
口から出るのは悲鳴。
挿入されるたびに「いやだ」「やめて」「ゆるして」と訴えて声が枯れ果てると快楽がやってくる。
木鳴弘文と誰より深くつながっている事実に体が熱くなる。
湿り気を帯びた膣は悦んで男性器を締めつけた。
心とは裏腹に中に出されたいと体が望んでいた。
妊娠さえすれば学園を辞める大義名分が得られるので心だって本心でだって望んでいる。
そう、身体が心を裏切ってるわけじゃない。
木鳴弘文の子どもが欲しい気持ちとオレに触れないでほしいと暴れだす拒絶の感情。
自分の苛立ちの原因を言葉で説明できない幼子が地団太を踏むようなオレはおかしくなっている。
勘違いが続いていたなら、木鳴弘文にとって自分は特別だと思いこめていたなら今の状況だって当然の成り行きだと受け入れたかもしれない。
こうなることは最初から分かっていたとオレは自分をバカにしていた周りを笑っただろう。
木鳴弘文はオレのものだと最初から言っていただろと勝ち誇るのだ。
今はそんなことは思えない。
だから、泣きじゃくりながら「いやだ」「やめて」「ゆるして」と叫ぶ。
気持ちいいのに気分が悪く、満たされるのに心が欠ける。
理由のわからない相反した気持ちを持ち余す。
行為の最中に「俺が好きなんだろ」と言われるのを首を横に振って答える。
今までオレは木鳴弘文を好きだと思ったことはない。
何度も伝えているにもかかわらず頻繁に聞かれて否定すれば「嘘つくな」と返される。
意味が分からない。
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