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 高校で目を離した隙に康介は俺の部屋から消えた。  いつまでも軟禁状態にできるわけもないので自分の部屋に帰るならそれで構わないと思っていたが向かった先は久道のところ。  康介は学習能力がない。  俺を怒らせるのが好きらしい。  思い返せば出会ったころから俺はあいつを怒鳴っていたかもしれない。    人の話を聞かないバカすぎる行動にあきれしかないが手は打っていた。  久道の手を取れると思ってるバカに自分の居場所を教え込んでやる。    俺は康介を抱いたその夜に妊娠させたという前提で木鳴の祖父母と下鴨の家に連絡を入れた。  これは自分でも思い切った行動で若干その場の勢いや熱にあてられ冷静さに欠けていた。  だが結果的には最善だった。  一度の行為で着床した証拠はない。とはいえ囲い込んでおけば嘘から出た誠になる。  康介が俺のことを好きじゃないと意地を張る理由は未だによくわからないが重要なのは俺の気持ちだ。  俺は康介が産む子供に俺の遺伝子情報が含まれないことが許せない。  それがシンプルに突き詰めた俺の感情だ。  これに嘘も誤魔化しもない。    康介が他の誰かの子供を孕ませないようにするのに一番手っ取り早く正しいことは結婚すること。  俺が康介を孕ませる権利を独占すればいい。  そして、結婚して家族になったのなら浮気など論外だ。  夫として俺は康介の行動に口出しできる。二度と「センパイは関係ありません」なんてバカみたいなことを言わせる気はない。  祖父母というよりは祖母が俺の年齢のこともあり結婚に難色を示したが康介の両親が大変喜んでいたことによって話は丸く収まった。  中学で俺に会った後に康介はすでに俺の子供を産むつもりだと両親に告げていたらしい。  つまり今回の話は祖母からすれば孫の不祥事だが下鴨側からすれば息子が有言実行したおめでたいこと、という認識だ。  康介の妊娠の受け取り方が正反対だったが逆にそれが良かった。  あまりにも反応が違いすぎるせいで祖母は常識よりもその場の気持ちを取った。  祖母は人が喜んでいる場面に水を差せる人じゃない。  俺の結婚の意思を康介の両親は応援してくれ、それを受けて祖母の気持ちも動いた。  下鴨の家が古くからあり、木鳴よりもいってしまえば格上。下鴨家は安定した会社をいくつか経営をしていて社会的に信用度が高いのも大きい。    木鳴の人間としての打算もあるかもしれないが、最終的に俺が康介以外と子作りするつもりがないと言ったのが決め手に違いない。  祖母はそういう人だ。  俺に対してどこか引け目がある。  父に外れた嫁をあてがったことを悔やんでいるのだろう。    家として木鳴の血を引く子が必要という話もあるが曾孫の顔が見たいという祖母としての気持ちもあったと思う。

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