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四十四

 溜め息をひとつ吐いて弘文は口を開いた。  いろいろと感情を咀嚼した複雑な顔だ。 「あの学園で俺は人気があった」 「知ってる」 「でも、外で繋がりあるやつらは俺のことをわかってるから好きだと思ってもアプローチはしてこねえ」  そんなわかりきった話を今更される意味が分からない。  学園内の生徒会や各委員会の主要メンバーである外でも弘文と仲がいいやつらと学園内だけの知り合いである親衛隊は弘文への反応が違う。  前者は弘文をリーダーとして慕っていてヒロヒロ言っていく。  揉め事が起こると「ヒロ~」誰かが殴られれば「ヒロー」だ。  弘文はトラブル鎮圧係じゃないので「そのぐらいてめえらでなんとかしろ」で終わることもあるし「仕方がないから助けてやるよ」と言いながらの助っ人参戦もあった。  仲間からのSOSを弘文は見捨てない。それはいい。  彼らはそういう集団としてオレが弘文と出会う前から徒党を組んでいた。  学園の生徒たちで構成された親衛隊たちは違う。  弘文のことなんか何もわかっていないのに会長会長言ってまとわりつく親衛隊たちはどうかしている。  オレが妨害に妨害を重ねて追い払わなかったら弘文だって魔が差した可能性がある。あいつらはそのぐらい図々しい。  久道さんが来るものを拒んでなさそうだったから弘文もいけると思われたんだろう。  男に興味はないと弘文がいくら言ったところでオレを孕ませられるなら性別へのこだわりなんてたいしたことない。  オレは男か女かわかんないような人間だ。  最初にオレの身体を見て弘文は気持ち悪いと言った。それが普通の反応だ。   「外でも繋がってるやつらが俺に何もしないのは……一番はお前がうざいからだ」  ボディーガードとして優秀だっていうならもっと素直に褒めてほしい。  弘文は回りくどい。  こういう話し方は子供に悪影響だ。  長男である鈴之介はすでに引き継いでいるかもしれない。    それに本当に問題なのは過去じゃない。今の話だ。  目をそらし続けることが出来ない現在進行形での弘文の不貞行為をオレは受け流せない。そのせいで気分が落ち込んでいる。 「オレがいくら言っても弘文は女の子数人と毎日話してた。弘文ハーレムは健在ですか」 「ハーレムなんかあるかよ。……話ぐらいするだろ。友達の姉や妹やその知り合いなんて全員仲間みたいなもんだし。ギャルかゴリラみてえなやつばっかだったし」 「弘文の好みはゴリラギャルか」 「……見た目はともかく良いやつらだっただろ」 「オレにいじわるするようなやつらが!?」 「いじわるってゲームだろ。ロシアン系でいっつもハズレ引くお前が逆におかしい」  トウガラシが入っている飲み物とかシュークリームとかシューマイとかみんなで共謀してオレに食べさせて笑い物にしていたくせに弘文の反応はコレ。  やさしさが不足してる。

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