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番外:下鴨と関係ない人「久道」1

久道視点。 ※番外編は時系列順に並んでいない可能性があります。  木鳴弘文とは親友というか悪友で幼なじみの腐れ縁だ。  持ちつ持たれつ付かず離れず、そんな関係。  だからこそ今の現状は意外だった。  ヒロが家庭を築くと思わなかった。こんなに早く。     「よいぞ、とくと語るがよい。ゆるす!」 「ヒロコ姫マジかわっ」 「かわいいまで言いなさい。言葉遣いがなってません。やりなおし」 「すみません、姫! マジかわいいです。正座をやめていいですか!?」 「足をくずすな、軟弱者」 「久道おにいちゃん、正座し続けると足が痺れて話せなくなっちゃうなあ」 「特別にクッションを使ってよいぞ」    座布団を勧めてくる下鴨家の長女。  かわいいお姫様は自分の両親の昔話が聞きたくて仕方がないらしい。うずうずしているのが見てとれる。  もったいぶるとブチ切れて攻撃してくるので適当なところで本題に入ることにした。   「俺とヒロの出会いは」 「聞いとらん」  切って捨てられた。  辛辣だが見た目がかわいいので許せる。  癇癪持ちで攻撃的な弘子ちゃんが実は一番、木鳴弘文に似ている。  静かで人形のような次女の深弘が実は一番、下鴨康介に似ている。  この事実はたぶん不名誉なことなので俺の胸にしまっておくべきなんだろう。   「も~、姫ってば俺に興味がなさすぎぃ」 「ひーにゃんは下郎」 「下郎でもいい! ひーにゃんって呼んでくれるなら!!」  無言でおでこをベシベシと叩かれる。  早く話せという催促だ。  本当に怒るときは静かにブチ切れるヒロそっくりで怖い怖い。  康介くんは訳が分からないけれどかわいいから許せる。  弘子ちゃんからも何をされても気にならない。かわいいから。   「康介くんはメチャクチャかわいくてね」 「コウちゃんは格好よくもある!」 「うんうん、コウちゃんは格好いいよね」  俺はかわいい子の言葉を否定しない。   「それで?」 「前も言ったけどお互いに一目合って恋をした、みたいな」  少なくとも俺にはそう見えた。  そうでもなければ二人の反応がおかしい。 「ドラマティック!!」 「ロマンティック!! で、まあ、鈴くんが産まれました、と」 「それだと中学でおにいが発生してる!!」 「いろいろ省きました」 「キチントさんして!!」 「チキンさんだからねぇ、久道おにいちゃん」    どこまで語るべきだろう。  そもそも語るだけのことを俺は知っているんだろうか。  二人の分岐点に俺はいつもかすっているかもしれないが脇役にすらなってない。  二人の舞台には二人しかいない。   「これ言うと怒られるかもしれないんだけど」 「どんどん言うです。どろどろ吐け、吐くのだっ」  声を小さくするとうなずきながら近寄ってくる。  耳に手を当てている弘子ちゃんは無邪気でかわいい。癒される。 「ヒロって面倒な奴なんだよ」 「知っとるわ、たわけ」 「娘にそんな切り返しをされちゃうんだ、ヒロ」  思わず遠い目をするしかない。  内緒話に見せかけて大したことがない話をしたけれど「知っとるわ」扱い。  父親の地位とはこんなにも低いのか。笑える。

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