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番外:下鴨家の人々プラス「海問題11」

下鴨康介視点。  理由は分からないけれど弘文がエロい。  ちょっとご無沙汰な感じの熱を孕んだじっとりねっとりとした視線。  くちびるを舐めている姿がセクシーでこれはセクハラだ。弘子的に言えば破廉恥だ。    子供たちのいる前では一切そういった雄っぽい顔をしない弘文が男の色気を振りまきながらオレに流し目を決めてくる。  照れないでいられるわけがない。  オレはいつだって弘文を追う側で、弘文にへばりつく側でいた。  弘文はオレの手を離さないけれどオレを追いかけるような行動はとらない。    弘子がお腹にいた時に失踪しようとして失敗に終わったけれど、あれは自分の子供を勝手に連れて行くなということだ。    深弘が産まれてからのエッチは全部ゴムをつけているし、妊娠の兆候は一切ない。  オレはオレしかいない状態なのに弘文が見てくる。  弓鷹の様子が気になっているのかと思ったら弘文の視線の先は常にオレだ。  意識するとすごく恥ずかしい。    中学の時なら弘文の視線を受けるのは当然だと思ったかもしれない。  オレが弘文を見るのだから弘文だってオレを見る。  そういうものだと思って、ただ嬉しいだけの日々だ。  照れたり恥ずかしいなんて思ったことはない。    エッチのときは我に返るとそわそわとして落ち着かなくなるけれど、あれは自分の体に負い目があるからだ。  オレは弘文を気持ちよくさせられるのだろうかという不安はいつだって消えはしないが、子供を作るだけならお互いの快楽は二の次でいいのかもしれない。そういう風にも思う。    処女を失ったあの一度だけがあまり濡れてない状態で突っ込まれて痛かった。弘文ににらまれて心の方が痛かったので膣の痛みはどうでもいい。    それにエッチはあれ以降、気持ちいいことの方が多い。  下手くそ扱いしたこともあってか弘文はねちっこい。  オレは激しいピストン運動よりも抱き合って弘文を見つめ続けている方がドキドキする。  こんなに至近距離で弘文を見れるのはオレだけの特権だと思うと顔がにやけてしまう。    深夜につけっぱなしのテレビからエッチな話題が流れてきて、オレが好きなのがスローセックスというのだと知った。  抱き合ってずっとイチャイチャ。  明日に疲れを残さないので平日におすすめの夫婦のセックススタイル。  それいいじゃんと思ったが、弘文は変態だった。  オレが弘文が動かないように足を絡ませて腰をホールドしたら、ひたすら耳を舐めてきた。  耳の穴に何かが入るなんて鳥肌が立つ。思わず力が抜けると腰振り再開。  弘文はガンガン行こうぜなコマンドを使いすぎる。  体力と攻撃力にパラメーター全振りし過ぎだ。  早さがないのでオレが中だしをねだるように「まだ?」と聞いてしまったりする。ゴムがあるので弘文の射精待ちをする意味はないのに、なかなかイカない弘文を責めたくなる。オレの身体が気持ちよくないのか不安になるので挿入したら即、出してしまうぐらいになって欲しい。名器認定されたい。    一番はスローセックスとして長々まったりのイチャイチャタイムだが、それが無理なら弘文を搾り取るがごとくイカせまくりたい。いつもオレがもう無理だと訴えているので逆に弘文に参りましたと言わせるのだ。    考え方がどことなく弘子に汚染されている気がするが、主導権を握りたいと思うのは変じゃない。  それもあってか、弘文に見つめられるだけでときめいてしまう今はよくない。  オレを見ていない時は憂いを帯びた横顔になっている。  あんな格好いい顔していたら男女関係なく発情期の雌になるに決まっている。    バーベキューの肉や野菜が串に刺さってないと会長にクレーム出している心の小さいところも弘文は格好いい。  会長という後輩をここぞとばかりに使う弘文を鈴之介が「手伝ってやればいいのに」と言っているが、聞こえていないだろう。手が汚れることは後輩にさせるというのが弘文たちのルールだ。上には逆らえないので会長はやったことがないのだろう串刺しをする。    その姿を監視するために仁王立ちの弘文。手を貸しもしないのに仕事をしている顔をする。    なんだかちょっと懐かしくなって会長の隣でバーベキューの準備を手伝ってやる。  海で遊んでみんなお腹が空いているんだからさっさと食べるに限る。   「意外とスゲー手早いよな」 「口じゃなく手を動かせば?」 「うまくいかないんだよ……」  食材の大きさや串を刺す場所を考えないからか会長の作ったものは串を中心にして見ると肉や野菜が左右にうろうろしていて、一本の串に火が通りやすいものと火が通りにくいものを混在させていた。火が通りやすいのが先に焦げて、火が通りにくいのは生になる布陣だ。   「バカなんだ」 「お前むかしから失礼だよなぁ」 「だがしかし、瑠璃ドンが手際が悪いのは事実」 「るりどん?」 「弘子からすると会長は怪獣」 「いいえ、コウちゃん。どんぶりの方」 「もっと理解できねえぞ、おい」    横から手を出した弘子が会長が作った串をばらしていく。   「これはもう野菜炒めにして瑠璃ドンがどんぶりにするのがいいドン」    何度も刺し直した野菜は焼いている最中に串から外れていくかもしれない。  それ以上に弘文が手を付けたがらないだろうから、弘子の提案が正しい。  誰の口にも入らないかわいそうな食材はいなかった。そう、刺殺体は会長の口に入るのだから。  

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