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番外:下鴨家の人々プラス「海問題16」

下鴨弘文視点。      自分が性欲を抑えられないかと問われたら全面的に否定できる。  巨乳だろうが貧乳だろうがセクシー女優が裸で迫ってきても振り払う自信がある。  それは結婚しているからというよりも相手に勃起しても突っ込みたいと思えないからだ。  身体がムラッとして反応しても康介以外を抱く気にならない。  元々、俺が何かを見てムラッとしても康介がこの仕草をしたら、康介がこの服を着たらという、すげ替えが頭の中で自動的にされている。    一般的な美醜の判定以外、自分が相手をどうにかするかで考えると康介以外は当てはまらない。  CMでよく見る女優が人気があって売れているのだろうから、かわいいと判断できるが彼女にベッドに誘われてうなずくかといえば、ありえない。    割れたスイカを手でとって食べるという野蛮な行動に出ている康介。  指についた汁を舐める仕草が下品だと感じられない。   「皿に移してから食えよ」    割った直後の姿のスイカをしゃがみこんで食べだす非常識な姿を注意しながら指や口元に視線がいく。  いつの間にか髪の毛を切ったせいでうなじが露わになっていて噛みつきたくなる。    久道がタオルと一緒に用意した大きめなサイズのTシャツ。  海パンを履いているのが分からないぐらいに丈が長い。  その分、首元が開いていて、角度によっては胸元も見えてしまう。  シャツで隠しているはずが裸同然の露出度になっている。  いつものように海用のパーカーを着させればこんなことにはならなかった。    めずらしく康介が海の中に入って遊んでいたので気づけなかった。  海から出てそのままバーベキューをすると身体をふいてからシャツを着てもいつもの状態とは違う。  身体の線が見えないぶかぶかのTシャツはじんわりと濡れている。湿っているという表現になるのかもしれない。髪をふいていなかったせいか、海から上がったばかりだからか、大きめのシャツの中にある康介の身体が見える。    一時期よりも肉がついてきた気がするがまだまだ細い。  その身体がTシャツの中にあるのが、ふわっと伝わってくる。  短くピッタリとした服よりもぶかぶかの服の方がいやらしい。  久道を見ると瑠璃川のやらかしで怒っていたのを脇に置いて頷き返してくれた。  良い仕事をすると思わず告げれば「だろ」と短く笑ってきた。    正面から見ていると欲望が刺激されるので俺の前に康介を配置したが、濡れた髪がこれはこれでそそる。  肉を食べているのに康介を食べているような擬似的な感覚を得ていたら、スイカ割りをしようと言われた。  瑠璃川と弘子が話していることに少しの興味もないらしい。  康介の中でバーベキュー前にいる瑠璃川や弘子たちとパラソルの下でまったり食べている俺たちは別世界にいる。  あっちはあっち、こっちはこっち。  自分が食べ終わり、弓鷹も手持無沙汰なのでバーベキュー班が依然として肉を焼いていたとしてもスイカ割りという次のステージに進みだす。    昔から変わらず自己中心的な奴だが久道も弓鷹も二つ返事で了承して準備する。  俺の前に座り込んだ康介に焼けた肉や野菜を持ってきながら「コウちゃんはスイカ割りの応援以外もうここを動かないと思うの」と弘子は言っていた。その通りになっていた。    結構あっさりと俺の前からスイカ割りをする弓鷹を応援するポジションへ移動する。  弓鷹が瑠璃川を攻撃しそうなのもフォローして「まっすぐだ、がんばれ」と声をかける。  子供に嫉妬などしないし、康介が瑠璃川についでのように声をかけるのも構わないのだが、つい引き寄せて抱きしめたくなる。    さすがにそれはないと思って大人な対応をしていたら、康介はスイカを素手で食べだす。  大きな塊を口の中に入れきれずに汁があごを伝って落ちていく。  野蛮で汚くて下品というより子供っぽく無邪気だからこそエロティック。   「康介、意地汚い」    配慮して耳元で告げると反省したのか顔を真っ赤にして俺から飛びのいた。  鈴之介が「コウちゃん、真ん中の甘いところが良いんだよね」と皿にとって渡していた。  久道と弓鷹が割ったスイカだけでなくカットしたものも皿に乗せていく。  さすがに多いと思って瑠璃川を見たらまだ弘子と話している。

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