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番外:下鴨家の人々プラス「海問題17」

下鴨弘文視点。        島に着く前の船で鈴之介から兄弟で夏休みの宿題を合同ですると教えられた。  虫や植物などの写真を撮って山で見かけたとしてまとめるらしい。  取ったり触れてはいけないものがあるのか瑠璃川に聞いているのかもしれない。  元々、夏にこうやって遊ぶ以外に放置していた島だというから瑠璃川の無駄な金持ちぶりがわかる。  使わない土地にも税金などが発生するだろうに気にしない。土地を寝かせていてもったいないという意識がない。    カメラは久道が俺以外の家族を撮っているものと康介が俺だけ撮っているものと昔買ったすぐに写真が出来上がる弘子の持っているカメラがある。  鈴之介と弓鷹はスマホで写真を撮っていくんだろう。  どんな自由研究にするのか詳細は知らない。  夏休みの課題に親が口出しするのは野暮だ。子供たちの好きにすればいい。  学校の先輩に行ってよかったと話すにもこの島のことをネタにするのはお礼が言いやすいだろう。   「康介、食べるか」    スイカを持って声をかけると目を泳がせた後に近づいてきて口を開けた。  俺のスイカを食べながら照れたように「なんだよ、もう」と康介はもごもご文句を言いだす。  いつになく顔が赤い気がするのは日焼け止めが不十分だったからか。    俺が塗りたかったが弓鷹と弘子が康介の全身に日焼け止めを塗っていた。  肌が紫外線に弱いくせに昔から日焼け止めも化粧水なんかも康介は嫌がった。  べたべたとした感触と化粧の独特な香料が苦手だという。    痛い思いをするのが自分だけではなく子供たちもだと気づいてからは多少は直ってきたが、昔は酷かった。  良かれと思ってチームの女連中が康介に日焼け止めやその後のフォローで化粧水を塗ろうとするのを全力で嫌がって逃げていた。  涙目で「スースーするのいやだ、痛いよ」と泣きついてくる康介と子供たちに日焼け止めを塗られてきゃっきゃっ笑っているこの違いは何だろう。やっていることは同じだが康介の反応は正反対だ。    自分と子供たち全員が同じ日焼け止めということで仲間意識があるのだろうか。  ともかく、クーラーボックスからアイスノンを取り出して康介の首元につける。   「うっひゃん」    思わぬ衝撃だったのか康介が飛び上がる。  ギリギリで皿の上からスイカは落ちなかったが、プラスチックの先割れスプーンは砂に刺さった。  恨みがましい顔で見られるが、日焼けは火傷と同じだ。冷やしておくに限る。   「気にするな。スイカ食べたいんだろ、食べてろよ」  耳の後ろからうなじを撫でたり、服の中にアイスノンを滑らせたりするが、康介の顔の赤みは減らない。  スイカを食べているから顔が赤いなんてことはないだろう。  ぶるぶる震えて口の端からスイカがこぼれている。    だらしがないと思いながら舐め取ってやった。    

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