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番外:下鴨家の人々プラス「海問題20」
下鴨弘文視点。
てっきり康介と俺で同じグループにすると思っていたら絶賛、俺をにらみつける最中の弓鷹と久道を配置する策士弘子。
まさか、とはこういう時に使う言葉だろう。
久道は瑠璃川の言動が気に入らない。
会社の人間を連れてくるという久道の努力を無にしたことが許せない。
プラスして自分が悪いことをしたという自覚がなく嫌われたり避けられる理由を求めて久道に過剰に接触する。久道が嫌がる分かりやすい行動パターンだ。
久道は自分の中のルールやリズムを壊されるのを嫌う。他人から与えられる優しさすら不要という、どこかハードボイルドやロックを勘違いしたような理想像がある。
康介や弘子が例外というよりも自分の中で何を言われてもいい人間として分類してるので発言の是非を問わない。
どんなことを言われても何をされても気にしないのは優しいというよりも冷たい気もする。
久道はそのあたりを他人に察知させない人間なので転職が失敗し続けているのは実におかしい。
周囲の環境を変えても問題が発生するなら、他人ではなく自分にこそ問題があると考えるべきだ。
久道も自覚があるからこそ、うちに来るかと呼んだ時に素直に家にやってきた。会社の方には二つ返事ではやってこれないのはプライドなのか、血の繋がっていない兄弟と顔を合わせたくないからか。
久道の説得が無駄なったことは俺も悪かったと思う。
ある程度は見逃してやりたいが、これはない。
「軍服に猫耳……」
たしかに弘子も深弘もかわいいだろうが、康介すら同じ格好というのはどういうことだ。
全身が緑を主体にした迷彩服なので軍服というよりもサバゲーやミリタリーオタクが着用しそうな服だ。
これから日が暮れるにしても、つなぎは暑そうだと思ったら康介はあっさり上半身を脱いで大丈夫だと笑う。
薄手のタンクトップの生地を下から押し上げて目立たせている乳首は大丈夫じゃない。
子供に見せてはいけない格好だ。上半身を脱がす許可は与えられない。
ハーフパンツというよりは、キュロットのような一見するとスカートを履いているように見える康介の下半身。
シルエットとしてはかぼちゃパンツが近いのかもしれない。
ウエスト部分に太めの大きいベルトをしているせいで下半身が強調されている。
下半身というよりも足だ。
白く細い足をブーツと薄手の黒いストッキングで覆っている。
ブーツは山歩き用の本格的なもので迷彩服に似合っているが黒のストッキングはエロさしかプラスしていない。
ストッキングがなかったら太ももの数センチが無防備にさらされるとはいえ薄手の黒はエロい要素しかない。
これで山の中を写真を求めて歩き回ったら確実に蒸れる。
「猫耳、つけるの嫌がってなかったか」
康介の頭にあるのは猫耳だ。三角形がふたつある。
思ったほど重くなく動いても邪魔にならないのでつけることにしたという。
弘子も深弘も間違いなく似合うだろうが康介はやめておけ。
そう言いたかった俺の前に猫耳をつけた弓鷹が現れた。かわいい。ちょっと不服そうな顔を含めてかわいい。
これは俺以外みんな猫耳をつけている流れだ。久道は見たい景色のためなら恥ずかしいなど考えることもなく自分から猫耳をつけにいく。あいつは躊躇わないやつだ。
「弓鷹が弘文に話があるって」
頭の中には猫耳のことがいっぱいで最近つれなくなった理由を口にしてくれる弓鷹に感謝できない。
やっと話してくれるのかと感激するよりも先に下鴨一家は猫耳迷彩色でいいのかと今日のファッションについて触れて欲しい。子供に高度すぎる願いなのか弓鷹は「なんで」と言ったっきり黙る。
「なにが、なんでなんだ」
「なんでわかんないの」
難易度が高すぎる。
弓鷹の気持ちを読みとれなかったからこそ避けられ続けた。
原因が分かっていたら謝っていたが、何もわからないので謝ることすらできなかった。
「なんでそんなに勝手なことができんの」
淡々と吐き出そうと思っていたのを失敗する。そんな弓鷹の空気に俺は助け船を出すことができない。
弓鷹が俺に対して感じている不満に全く想像がつかない。
「ヒロくんはコウちゃんのこと好きだって思ってた。言葉にするとかしないとか関係なく、前提なんだって、でも、違う。違ったんだ」
どこか康介を思わせる支離滅裂さだが、弓鷹が涙ぐんで俺を見つめる。
裏切られたと弓鷹の顔に書かれていて申し訳ない気持ちになるのに猫耳のせいで微笑ましいと口元がゆるむ。これは久道の陰謀だ。このままでは真面目に話を聞いてやれない最低の父親になってしまう。
康介は弓鷹が何を言っているのか分かっているようで「もう一息だ、とどめを刺すんだ」と不穏な発言をしだした。
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