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「海問題 久道にとっての現実と真実1」
久道視点。
「邪魔だと思うなら来るなよ。迷惑なやつだな」
いつもなら康介くんのこういった態度にヒロからたしなめる言葉がかかる。
どうやら弘子ちゃんと鈴くんにジャガイモにケチャップはおいしいと力説していて俺たちに意識を向けていない。
弓鷹くんが具の多いピザを片手に反応に困った顔を俺に向ける。
子供に対してだけ視野が広いのか康介くんはジャガイモをヒナの口に詰めて空になった皿を弓鷹くんに渡す。具をこぼしてもいいようにという配慮だが、あつあつのジャガイモによってヒナの口はたぶん火傷した。
ヒナは気にしないだろうが、扱いの雑さが酷い。今に始まったことではないが、会話している相手とあっさりと視線を外す。
康介くんにとって重要なのは弓鷹くんだった。
名前を知らず、顔も覚えていない相手じゃない。
「弓鷹、ピザって実は手で食べなくていいんだぞ。イタリアではフォークとナイフで食べている」
「具が落ちちゃわない?」
「くるくる巻いて食べる……これだと巻けないな。マルゲリータはないのか」
「いっぱい具があるほうが美味しいって弘子がゆずらなかった」
「後先考えない子はかわいいな」
親バカ発言をする康介くんにツッコミを入れることのない弓鷹くん。具をこぼさないように小さな口で食べている姿はかわいい。横から「和むね」と言われて寒気がした。康介くんへの相槌か、俺の内心への同意なのか。どちらにしても近寄って欲しくない。
言葉を交わせば絡めとられるのが分かっているので物理的な距離をとるのが一番だ。
コレの最も厄介な部分は善人であるところだ。
善意が人を殺すところを俺は何度となく見てしまった。
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