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番外:下鴨と関係ない人「不必要な×××2」

 あるところにAさんが居ました。  Aさんのことを好きなBくんが居ました。  二人は付き合いだしましたが趣味が合わないので一緒に居てもギクシャクします。  Bくんを好きなCくんが居ました。  男同士だし、Aさんと付き合っているのでBくんを諦めるべきだと思いながらCくんは男の人に身体を売りました。  セフレや男の恋人ではなく援助交際です。犯罪です。  これはよくありません。    ということで僕はBくんに親友のCくんの状況を教えました。  すぐにCくんの気持ちを受け入れられなくても、恋人であるAさんと上手くいっていないBくんは仲良しのCくんのそばにいることを選びました。  Aさんには淋しくないようにCくんの話をBくんにする前に合いそうな相手を紹介しています。  Aさんが浮気セックスしているのを見てCくんの一途な気持ちがBくんに響いたのかもしれませんが、それはたまたま偶然です。    と、まあこういったことに学生時代、僕は何度も関与した。  木鳴弘文に僕は「正しいのかな?」とたずねるといつでも「正しいと思ったからお前は動いたんだろ」と返される。それは僕を肯定しているということだ。嬉しくなるし安心する。    もしAさんが僕にハメられたと言い出しても、CくんにBくんに教えるなんてひどいと言い出しても、木鳴弘文が「お前にとっては三人全員が不幸になっても三人全員が幸せになっても関係ないからいつでも同じ行動をするだろうな」とわかってくれる。    彼らの関係がどちらに転んでも僕には関係ないけれど、有耶無耶にしているのは気持ちが悪い。  Aさんが妥協してBくんと付き合っているのを隠して笑っている姿は気持ちが悪い。  Bくんが何も見えず、何も聞かず、何も考えない姿も気持ちが悪い。  Cくんが性的マイノリティで臆病になるだけではなくBくんを理由に悪いことをするのは最低だ。  犯罪行為をしながらBくんとの幸せを夢見るCくんは汚物だ。    血のつながった僕の弟は好きなだけだ。  好きな気持ちを溜めこんでいるだけで好きな相手に何のリアクションもしないのはCくんと一緒だけれど、援助交際になんて手を出していない。犯罪なんかしない。男に抱かれたいだけのCくんみたいな汚物とは違う。    そう思うと生まれてからずっと守ってきた弟が綺麗な天使に思えて安心する。  僕の気持ちを木鳴弘文は「たまねぎを剥いていったら何もないって見せかけて中身腐ってるみたいな状態だな」と嗤う。  自己中心的な感覚や私怨を常識と厚意とお節介でコーティングするのはそんなにおかしなことじゃない。ありふれていると思う。      どうにかして弟たちが付き合ったりしないかと僕はいろいろと考えた。  一番は。    ひー君は木鳴弘文と双子ごっこをしているみたい。  ミラー効果ってやつなのか、同じものを食べて同じ音楽を聞いて同じ好みだからこそ、木鳴弘文が僕を好きになったら嫌っている僕を好きになるだろうし、男と付き合うことに対して前向きになって弟を見てくれるかもしれない。    木鳴弘文は僕の提案を笑い飛ばした。  二重の意味でないと言う。    僕のことを木鳴弘文は好きにならないし付き合わないから、ひー君もまた僕を好きになったりしない。  これは確かにその通りだった。      下鴨康介とひー君の関係を見れば完全なる片思いで、木鳴弘文に彼氏としてこの状態はアリなのか聞いた。すると下鴨康介と付き合ってなどいないと言われた。どう考えても付き合ってる。ひー君が木鳴弘文の感覚に引っ張られているのは、分かりきっているのになんで放っておくのか分からない。    二人の子供が住む家族の中にひー君を引きこんで住まわせる木鳴弘文の感覚は謎だ。  ひー君が嫌いで嫌がらせをしているんだろうか。  僕たちの家にひー君の部屋はちゃんとある。学生時代は寮生活がほとんどだったので部屋にあるものが僕が義理の父からお金をもらって揃えたものだ。  離職中でお金に困ってそうなひー君が実家である自分の場所に帰ってこない理由が分からない。    僕はそういったひー君の謎を探るためもあるし、楽しかったので木鳴弘文の力になることにした。  学生時代にやりすぎてひー君の居場所を奪ったと思われて怒っているんだろうかと思うこともある。  木鳴弘文の役に立つ右腕ポジションみたいなものにひー君が固執している。なら僕はちょっと怒られても仕方がない。    他は何も悪いことをしていない。  そう思っていたけれど、すこしだけ、下鴨康介は苦しみぬけばいいのにとは思った。Cくんに対して思ったような強い気持ちじゃない。すこしだけの嫌悪。他のみんなも感じていた嫌いの気持ち。  それをひー君が僕に怒るのは筋違いだ。  下鴨康介、彼自身が僕に言わなければならない。    彼の性格を考えてそんな日は来ないだろうと思っていたら違った。  木鳴弘文が「お前の想像の外側にいるやつと話し合えるか」といつか言っていた言葉を思い出す。    

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