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番外:下鴨家の人々 「下鴨康介は未だに○○を知らない」
下鴨康介視点。
風呂から出ると珍しく弘文がソファで寝ていた。
この家にはオレと弘文の夫婦の寝室とは別にオレと弘文それぞれの寝室という名の私室がある。
オレの部屋にあったあまり使っていなかったベッドは子供たちに渡して、布団を置いてある。
この布団だってほぼ使うことはないけれど、今日のような日には便利だ。
オレはテーブルを退かして自分の部屋から布団を持ってきてソファの下に布団を敷く。
いつも弘文が落ちてこないかと思いながらソファの下で布団にくるまっている。
今のところ弘文はソファから落ちる気配がない。
器用に体を丸めてソファにフィットさせている。
弘文はオレよりも早く起きて遅く寝るので寝顔を見る機会が少ない。
熟睡しているのでいい機会だと写真をいっぱい撮っておく。
オレのコレクションが増えた。
全然、弘文が目を覚まさないのでテレビをつけると興味深い話題を取り上げていた。
エロ用語なのかネット用語なのかあたらしい言葉「逆和姦」という単語が生まれたというのだ。
和姦というのは合意の上でのエッチだ。逆というなら強姦やレイプということだが、なぜ逆和姦なのか。
首をひねるのは俺だけじゃない。テレビの出演者たちも不思議がっていた。
最終的に逆レイプという女性攻めから確立したジャンルの亜種として逆和姦が現れたのだとオタクっぽい人が口にする。
嫌がっている男をノリノリな女が襲うのが逆レイプなら、男女ともにそこまで嫌がってはいない、何だかんだで合意な雰囲気になるのが逆和姦。
男は射精したら合意とはよく言ったもので、逆とついても女から仕掛けると和姦なのだという感覚になるという。
出演していた女性芸人が女にだって性欲があるからこういう表現のバリエーションが増えてきたんだと発言する。
納得する気持ちがないわけでもないが、オレは逆和姦が何だか飲みこめない。
そもそもオレはエッチが好きではない人種だ。
セクシーな弘文の表情や弘文に抱きしめられるのが好きだからあの時間が嫌いなわけではないけれどエッチしないというムラムラは実はちょっと分からない。弘文と手をつなぎたいとかキスしたいとかはあっても膣で気持ちよくなりたいかと言えば、どうでもいい。
弘文とずっとくっついていられる時間としてはいいものだけれど、妊娠の必要がないなら出し入れとか必要ないと思う。挿入したままで良いからゆったり抱き合っていたい。
と、オレの望みにピッタリなものとしてスローセックスという言葉が紹介された。
忙しかったりエッチ嫌いの女性には向かないけれど、ある程度の年齢の男女のまったりエッチとしてはいいセックス方法。
明日に疲れが残らないので平日でも大丈夫だという。
ちょっと試してみようかという気持ちと弘文が寝ているので好きにしてしまえという気持ちでキスすると起こしてしまった。怒られるかと思えば無言のまま寝室に連行される。テレビがつけっぱなしなので後で消しに行かなければいけない。
「旦那の寝こみを襲うとはできた妻だな」
「逆和姦未遂」
「あ? 逆……和姦ってなんだそれ」
「弘文けっこうされてそうだ」
「逆和姦を?」
「誘われてホイホイされるんだ」
寝起きだからかいつもより人相の悪い顔で「俺がお前以外を抱くわけねえだろ」と言われた。
不機嫌そうに「そもそも触られるのが気持ち悪いんだよ」と言いながら俺の身体をなでまくる弘文。寝ぼけてるんだろうか。
「男は射精したら負けという悲しい生き物なんだ」
「お前以外で勃起しない時点で男失格だな」
「オレは素直だから刺激すれば誰でもいける。たぶん」
余計なことを言ってしまったのか弘文に耳を引っ張られた。
首を強めに吸われる。
虫がつかないようにというこの印こそが虫に食われた証だと思う。
弘子がオレにムヒを塗ってくれる気がする。
「俺にそのつもりはないのに手ひどく犯されるための段取り踏むお前ってバカなのかマゾなのか、俺のことを好きすぎるのか……」
最後のはないと言ったら確実に手ひどく犯される最終段階に突入するのでオレは「弘文がバカでマゾでオレのことを好きなんじゃない」と返した。
手ひどく犯された。
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