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運命じゃない人 7

週末は小雨が降りしきる、二人の見事なデート日和だった。 勢いよくカーテンを開けた郁は、朝から全開の笑顔で浮かれている。秋人も早起きをして、ばかみたいに大きなお弁当を作った。全力で腕をふるい、郁の好きなものばかりを詰め込んだ。 「秋人、おはよ!今日はどうする?どこ行く?」 「郁の行きたいところでいいよ。あ、でもお昼はあの公園の奥にある高台がいいな。確か屋根のある休憩所から見る景色が良かった気がする。お弁当も作ったし」 「やった!お弁当楽しみ!」 デートコースを郁に任せると、結局秋人ばかりが得をしている感じになってしまった。秋人の観たかった映画を鑑賞し、秋人の服を買った。 デート用にキメた郁は、行く先々で周囲の人々を魅了する。どうしてこんな人間がαだと気付かなかったんだろう。秋人も例にもれず見惚れていると、突然綺麗な顔に覗き込まれて悲鳴を上げそうになった。 「秋人!もう、せっかくのデートなのに上の空って酷くない?」 「俺の彼氏はカッコいいなあって思ってたんだよ」 「え」 珍しく素直に言うと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、郁は赤面して固まっていた。 「ほら、そろそろ昼飯食いに行こう」 「う、うん!」 駅ビルを出て、二人で傘を差して歩く。相合傘は、適当に理由をつけて止めさせた。 ふいに隣の影が無くなっていて、後ろを振り向く。立ち止まった郁は、眩しそうな顔をして、とある場所を見つめていた。 「郁、どうかした?」 「ここ、初めておれが秋人を見つけたとこ」 「え……もしかして……」 「うん、実は見てた。運命の二人が出会ったんだなあってすぐに分かった。すごいね、あんな感じなんだね。研究して分かってるつもりだったけど、想像以上だった」 「ああ、うん」 混乱して、どぎまぎしながら返事をする。郁が不穏な空気を発しているように見えるが、気のせいだろうか。 「それで、すぐに身を引く秋人に惹かれた。辛いくせに笑ってさ、その方が幸せだろうって相手のことしか考えてなくてさ」 「そんないいもんじゃなかったと思うけど……」 あの店で会ったとき、酒の勢いで思いっきり愚痴ってしまった醜態は、思い出すのも憚られる。そんなことも言ったかもしれないが、かなり良い方向に受け取られていると思う。 次に何を言われるかびくびくしていると、郁はすっと切り替えるように無邪気に笑った。 「早くお弁当食べたいな」

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