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運命のΩ ~Side:ルキ~ 2

物心がついたときには、周りはΩばかりだった。 如月ルキが育ったのは、とある養護施設だ。早朝に泣き声が聞こえると、新しい仲間が増えたんだと分かった。スタッフは許容人数を超えてもなお増え続ける子供たちにてんてこまいになっていて、手が回っていなかった。 毎日は戦争だった。食べるものも着るものも、良い物は力の強い者に奪われた。それがルキの世界の全てだったから、そういうものだと思っていた。争ってまで欲しいものなどなかったルキは、諦めの良い子供だと思われていた。 一人だけ、そんなルキを心配してくれる人がいた。 3つ年上の少年で、ルキと同じように線が細くいつも力で負けていたから、勝手に仲間意識を持っていたのかもしれない。艶やかな黒髪とつぶらな瞳が特徴的なその少年は、カナといった。 カナはルキに読み書きを教えてくれた。唯一他人と争わなくても手に取れる娯楽品が本だったから、二人でありとあらゆるものを読み尽くした。 「いっぱい勉強して、絶対偉くなるんだ。大きな会社に入って稼ぎまくってやる」 口癖のように言っていたカナは、成長するにつれ、そういうことは言わなくなった。ずっと勉強は頑張っていたしルキにも教えてくれていたけれど、瞳には諦めの色が宿り始めていた。 ルキも小学校に通うようになり現実を知ると、理由はすぐに分かった。 30人近くいるクラスは、ルキ以外は全員βだった。口々に「すごーい!Ωだ~初めて見た~」と無邪気に言われ、自分が他の人とは違うのだと知った。養護施設の子供もスタッフも医師以外はΩだったから、ルキにとってはβこそ珍しい存在だったが、言わずにおいた。 カナに教わっていたおかげで、授業は簡単すぎるくらいだったのに、教師はルキにだけ殊更丁寧に教えた。分からないものと決めつけ、見下しているのがありありと分かった。クラスの子供たちもそれを見て、ルキは自分たちより下の存在なのだと認識した。 Ωに挨拶をしてあげた、Ωと一緒に遊んであげた、彼らにとってルキと接する全ては施しであり優越感を満たす材料になり得た。だからテストの点が良いことなど許せなかったのだろう。しきりにカンニング方法を問われ、答えないと次第にルキは孤立していった。

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