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運命のΩ ~Side:ルキ~ 6

入学しても、やっぱりルキは異端な存在だった。学内唯一のΩとして注目を集め、さまざまな根も葉もない噂が囁かれた。そのほとんどが性別に関するもので、最も多かったのは将来αになるだろうということだった。努力を認められるのとは程遠い評価だ。 Ω性に振り回されて、もはや何のために頑張っているのかも分からなくなり、疲れ果てたルキは体調を崩した。そのせいでバイトもクビになり、生活苦についついあの白い封筒に手を伸ばしてしまいそうになった。 一応受け取りはしたけれど、使う気なんてなかった。次にカナに会うときは、目標を達成した報告に行くときだと思っていた。そのときに返すつもりで隠しておいたのに。 情けない思いに捕らわれながら、ルキはカナに会いに行くことにした。 セキュリティの甘いアパートに着き、緊張しながらチャイムを鳴らす。「はい」と懐かしい声がして、カナが顔を出した。 「いらっしゃい。久しぶりだね、ルキ」 カナはルキが初めて見る朗らかな顔で笑っていた。 室内に通されると、中はダンボール箱だらけだった。 「カナ、引っ越しでもするの?」 「うん。実はね、運命の番に出会ったんだ。来週から一緒に暮らすことになってる」 「え……」 カナはあからさまに照れ、はにかみながら続ける。 「あんなにαを嫌ってたはずなのにね。街で出会った瞬間に、絶対この人を好きになるって分かったよ」 「ど、どんな人?」 「見た目はチャラいかな?でも出会ってからはボク一筋でいてくれてる。βの彼氏がいたのに、ボクを選んでくれた。初めて誰かに選ばれて、すごく嬉しかった」 胸に小さな棘が刺さって、声が出せなくなる。ルキがどれだけカナを慕っていても、カナの心には何も響いていなかったのかと悲しくなった。それもやっぱりΩだからなんだろうか。兄のような存在をαに奪われた嫉妬も加わって、気持ちは地の底まで沈んだ。 ルキの表情が浮かないことに気付き、カナは慌てて謝ってくる。 「ごめんね、自分の話ばっかり。で、ルキの用事は?」 「あ、うん。あの、学費のことで……」 「ああ、あれか。先生から受け取った?気にしなくていいから、使って。ボクにはもう要らないものだから」 「……ありがとう」 「ううん。大学、受かったんだよね。言うのが遅くなったけど、おめでとう」 「うん。カナも、幸せになって」 「ルキもね」 たくさんの言葉にならない感情が溢れ出て、耐えられなくなった。用事があると嘘を吐いて帰宅して、部屋の真ん中にぽつんと座る。全身を圧迫するような静寂が押し寄せて、たまらなく一人だと感じた。 頑張っても頑張っても、Ωの自分が認められることはない。もし本当に異変が起こってαになれば、今よりずっと楽に生きられるだろう。けれどそんなことは望んでいないし、今のままの自分を誰かに必要として欲しかった。 結局カナからもらってしまったお金を借りて、ルキは優秀な成績を収めて大学を卒業した。

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