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第3話
元々ノンケからの告白に良い印象を持っていなかった俺は、それから1ヵ月の間あれは事故だったと自身に言い聞かせ忘れる努力をしていた。その間他部署へ異動となった天嶺からは何一つ音沙汰は無く、やはり自分はいつもの興味本位でワンナイトラブした男たちのように騙されたのだと心のどこかで思った。
事態が変わったのは、天嶺の宣言通り丁度1ヵ月経った頃。いつもの通り、残業を終え一人会社のエントランスから外へ出るとそこには天嶺が待っていた。
「好きだ、全て綺麗にしてきたので俺と付き合って下さい」
前置き無く唐突にその場で逆告白をされた俺は、そのまま天嶺に強引に手を引っ張られ日本の窓口である主要ターミナル付近に聳え立つラグジュアリーホテルへと連れて行かれた。
晴れて両想いとなったはずが、整いすぎた天嶺の本当の狙いが理解できず嬉しさよりも戸惑いの気持ちの方が先行してしまった。
綺麗にしてきたって、身体……のことだよな?
――それとも身辺整理ってこと?
あんなにもお似合いの彼女と別れられる訳、ないよな……
結局この日「綺麗にしてきた」のが何であるか具体的に確認できないまま、天嶺の迫力に押される形で俺たちは周囲には内緒の甘い関係をスタートさせたのだった。
それから程なくして美人すぎる天嶺の秘書課の彼女が寿退社した。
最初は天嶺が相手だと周囲も俺も思ったが、いつまでも指輪が嵌められないことや女の影が天嶺に見えないことで、彼女は違う相手と結婚したのだと悟った。
何もこの件に関して天嶺は話さなかったが、「綺麗にしてきた」のはこのことだとようやくその時気が付いた。
天嶺のような何もかもがパーフェクトな男に寵愛されるのは悪くない。むしろ日陰を生きてきた俺にとっては理想的な愛され方であった。
だが5年経った今でも俺からの告白だけでノンケの天嶺が溺愛する程、俺を好きになる理由が見当たらない。あの晩、どんなやとりがあったのだろうか。未だにそんなことを考えながら、天嶺との恋がバッドエンドにならないよう少しでも長く続くよう一線を引いた付き合いをしてきた。
今までの経験上、こういうことは知らない方がずっと幸せでいられることくらい理解していたのだが。
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