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第7話

「癸生川、お昼はいつもの手作り弁当か?」 巽が今仕方営業先から戻ってきたばかりの俺へと声を掛ける。朝、天嶺に呼び出されてからデスクに寄ることなく外へ出た俺に、呼び出しの理由でも探りに来たのだろうか。興味深々の表情を浮かべているように見える。 もうじきおやつ時だというのに、昼食がまだであった俺は巽を無視しながら資料片手に天嶺特製の手作り弁当を一人デスクで広げ始める。 同棲を始めてから5年。 仕事で事前にクライアントと会食をすると決まっている日以外、天嶺は俺の健康を気にして必ず手作り弁当を持たせてくれていた。 自分は弁当なんて食べないで栄養補助食品で済ませるクセに。 彩り、栄養、味どれも逸秀である天嶺の弁当は、巽を始めとした同僚たちから「母ちゃんが作った弁当」だと認識されていた。理由は、彼女もいない俺が手の込んだ弁当を作れるはずはないと思われているからだ。 地方出身の俺は大学時代から独り暮らしをしており、しばらく実母とは一緒に住んでいない。 だが色々と知られると面倒くさいので、「母ちゃんの作った弁当」ということにしている。勿論、天嶺も自分の作った弁当がそう呼ばれていることを知っていたが、特に何も言及しないし弁当作りを止めることもしなかった。 本当に天嶺は何でも器用にできる男だ。 箸で掴んだキュウリの1ミリ単位で施されている飾り切りを見つめながら、俺は朝の天嶺の熱雄を思い出していた。 あの後、顔射され飛び散った白濁の蜜を丁寧に舐め取られた俺は、危うく外勤へ行く前にクリーニングから返ってきたばかりのスラックスを汚してしまうところだった。 天嶺、どうしたんだろう。 らしくなかったよな……。 掴んだキュウリを弁当箱へ一度戻すと、巽がその隣にあったプチトマトを盗み食いする。 「あ、こら巽!」 「いいじゃん、一個くらい」 巽の唇に含まれた赤く瑞々しいプチトマトをみて、俺は久々に自身が咥えた天嶺の屹立の充血を思い出し赤面してしまう。 こんなに赤赤しくはなかったが、久々に間近で観察した天嶺の熱雄の色は獰猛で立派だった。 今まで交わった誰よりも。 時間が無くて、結局は口だけで終わってしまったが続きを……早く後ろの口で天嶺を咥え込んで最後までしたい。 そう思った俺は無意識の内に天嶺の大きさを思い出し、何も挿入ていない後孔をきゅっと締め付けていたのであった。 「それより癸生川、どこかウチの部署おかしいと思わないか?」 巽のその言葉にそう言えば出勤してすぐ、部署の女の子たちが暗いとかなんとか……と話していたことを思い出した。

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