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第2話

 古びた雑居ビルの2階。真っ黒な鉄製のドアの前に立つ。  あの広告から簡素なホームページに飛んだ。正確に書かれていなかったがやはりSMクラブの広告だったらしい。金額を確認し申込フォームに、名前、生年月日、希望の日時、希望のプレイ内容、最後にメールアドレスを入力して送信するとすぐに店の場所が書かれた返信メールが届いた。  インターホンを鳴らすと中から細身で背の高い男が出てきた。 「……はい」  こちらを値踏みするような目でじろりと見てくる。 「あの、予約した高倉です」 「ああ、高倉様。お待ちしておりました。私当クラブのオーナー、財前と申します。どうぞこちらへ」  薄暗い廊下を男に付き従い進むと、応接室のような場所に通された。 「どうぞ」 「あ、ありがとうございます」  一人掛けのソファーを手で示され、そこへ座るよう促される。  財前は向かい合う別の簡素な椅子に腰かけて微笑んだ。 「それで、今日はなにを希望されますか?」 「えっと、ここはその、SMクラブですよね?」 「SM……まあ、はい。似たようなものですね」 「違うんですか? そういうのを考えていたのですが」 「概ね同じですよ。それで、あなたは何をされたいのですか?」  財前はじぃっと俺の顔を見てくる。少し居心地が悪い。 「何って、一応申し込みの時に書いたと思うのですが。その、希望のプレイ内容」 「あなたの口からきちんと伺いたいのです。高倉様」 「えっと、縄で縛られてみたいです……」  柔和な口調だが、どこか強制力がある財前の言葉にそう返事をした。 「それだけで、よろしいのですか?」 「え?」 「縛られて、ただ放置されたいのですか? それなら別の緊縛クラブにでも行けばいい」 「いや、えっと……」  縛られて、放置されるだけでいいのか。  いや、違う。 「違いますよね? 縛られた先に、あなたが希望するものを仰ってください」  俺が、縛られた先に希望するもの。  俺が自己投影していた女の子たちは、なにをされていた? 「では、まずはお試し、ということでどうでしょうか? 当クラブについてあまり伝わっていなかったようですし。もちろん、代金はいただきません」  物のように縛られて、身動きがとれない中、男に体を奥まで暴かれる。それは、泣きわめいても止まらず、惨めな姿を晒す。 「私があなたの願いを叶えますよ。高倉様」  俺のすべてを見透かすように財前が言う。 「なので遠慮せず、仰ってください。ここならあなたが希望するものを得られるはずです」  俺の願い。  縛られて、いたぶられて、そして、惨めに。 「俺は……」

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