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第3話

「ふふ、随分といい格好ですね」  学校の保健室にあるようなベッドに寝かされ、履いてきていたボクサーパンツ一枚といった姿のまま両腕を頭の上で縛られた。足はM字開脚で固定され、その姿を財前にじっと見られている。 「恥かし……ッ?!」  息が詰まった。ぎゅうと両胸の俺の陥没気味の乳首を、乳輪ごと財前に摘ままれたからだ。 「みっともない仮性陥没乳首ですね。乳首はちゃんと勃起させるのがここでの礼儀ですよ」  クニクニと乳輪を指で摘まんだり揉んだりされるうちに、埋まっていた乳首がプクリと頭を表す。 「よくできました」  財前が頭を出した乳首を親指と人差し指で摘み上げる。 「ヒッ!?」  途端、ビリビリと今まで感じたことのないような痺れが腰に走った。 「乳首がお気に召しましたか? パンツに染みができてますよ」  首を持ち上げ股間に目をやると、そこは確かに緩く反応していた。  財前の人差し指が染みを作っている先端を布越しに円を描くように撫でてくる。 「このパンツ、邪魔ですね」  財前が大きな裁ちバサミを手にすると、ボクサーパンツの裾を引っ張る。  パンツを切るつもりだ。 「ちょっ、これ着てきたパンツなんですけど!」 「ええ、そうですね。それが?」  慌てて止めるが、悪びれる様子もなく返事をされて戸惑う。 「それがって……その、帰りとか」 「ノーパンで帰ればいいでしょう?」  財前はそう言い放つと、パンツの裾からハサミを入れた。  鉄のひやりとした感触が太ももに当たり、さわさわと鳥肌がたつ。 「大事なところを傷つけてしまうかもしれません。動かないでくださいね」  ジョキ、ジョキとやたら大きな音を立ててパンツが下から切られていく。  右足側から切られ、切り終わると左足側から同じように切られていく。左足側が全部切られると、パンツがただの布切れのゴミになり、床に落ちた。尻に下敷きになっている残りのゴミは、財前が引きずり出すように取り去る。  今、俺は何も着ていない。今日会ったばかりの財前に全裸で縛られた状態を見られている。 「そういえば、高倉様は体毛が少ないのですね」  大きな体の癖に少ない体毛。これも自分のコンプレックスのひとつだ。脇の毛はレスリングのような動きで擦れるからかもうほとんど無い。 「これは剃るのが楽でいい」 「え?」  今、財前は何と言っただろうか。 「ここの毛を剃るんですよ」  財前は俺の痴毛をひとつまみし、クイッと引っ張ると手を離す。  下の毛のことを言っていたのかと顔が赤くなる。 「い、いや。剃るのはちょっと……」  剃刀とシェービングクリームを用意している財前に待ったをかける。 「嫌、ですか?」 「はい、それはちょっと、困るというか」  職業柄、練習場や更衣室。試合中万が一があったりと、どこで誰から体を見られるか分からない。  素直にそう言うと、財前は「そうですか」と柔らかな笑みを浮かべ言った。 「高倉様。あなたに拒否権はありませんよ?」 「……っめた!」  泡立ったシェービングクリームがぽとりと股間に落とされ、それを塗り広げられていく。クリームで毛の全体が隠れると、ピタリと剃刀があてがわれる。  プチプチと毛が引きつれるような痛みとともに、ジョリジョリと毛が剃られていく。 「くっ……ううっ」  そのまま尻の穴の周りまで、生えていた毛をすべて剃られた。  それを蒸しタオルで拭き取られると、無毛の状態になった股間部分が晒される。 「ふふ、高倉様。もう完全に勃ってますよ。興奮しているんですね」 「ああっ!」  皮が半分剥けた状態で勃起した雄の部分を無遠慮に掴まれる。 「高倉様は乳首だけでなく、ここも仮性なんですね。かわいいですよ」 「い、言わないでください」  恥かしくて目眩がする。 「そういえば高倉様は……試合中とは違って随分と丁寧な言葉遣いをなさるんですね」  ぎくりとした。この人はレスラーとしての俺を知っているんだ。普段外を歩いていても気づかれたことがないから油断していた。 「俺のこと、知ってるんですか?」 「プロレスの試合、よく観るんですよ」  どうせインディー団体の、しかも人気はない選手だからと気を抜いていた。こんなところに軽々しく来てはいけなかったんだと、後悔の念が押し寄せる。 「あ……ごめんなさい。俺は、お客さんを裏切るようなことを」 「ご安心ください。さすがに私もそこまでプロレスラーに夢は見ていないですよ。ただ私は嬉しいのです。リングの上でふてぶてしく振る舞う高倉様の望みを叶えて差し上げることが出来ることが」  財前に頬を撫でられる。さっきまでの手荒い仕打ちとは違う、優しい触り方だ。 「すみません。本当はお客様のプライベートに、踏み込んではいけないのですが」 「いや……俺、あんまり人気のあるレスラーじゃないから、見てくれる人がいるってわかって、少し嬉しかったです」 「私はあなたのプロレスをしている姿、好きですけどね」  顔が熱い。そんなことを言われたことは、一度もなかった。 「さあ、続きをしましょう」  財前は口の端を吊り上げて笑っていた。

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