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第9話

 プレイルームで正臣と会うときは、まず会話からはじまる。 「あの、正臣さん昨日の試合、見に来てくれたんですね」 「ああ。とてもすてきな試合でしたよ」 「ありがとうございます……。でも、正臣さんのおかげというか、正臣さんが会場にいるってわかったから、思い切れたというか」 「まさか笑いかけてくるとは思いませんでしたが」 「まずは、正臣さんに楽しんでほしくて……」 「そう、いい子だ。そんないい子にはご褒美をあげよう」  正臣がジャージのジッパーをゆっくりと下ろす。 「さ、脱いで」  促されるまま服を脱ぐと、正臣の手が俺の上腕に触れた。 「痣ができているね」  昨日の試合中にできた痣だ。そこを正臣が親指で撫でる。 「いつも加納の蹴りは、ここで受けるから。あの、ダメでしたか?」  打撃技の多い加納と試合があった日は、いつもここに痣を作ってしまう。痣で不快にさせてしまったのだろうか。 「いいえ。ここならバレませんね」 「なにが……ッ?!」  痣の位置に正臣の唇が寄せられた。チリッとした刺激が走る。 「ま、まさおみさ……なにを」 「私の所有の証です」  キスマーク、というやつなのだろうか。痣の部分を見るともともと赤黒くなっていた部分の中心がさらに濃くなっている。  俺は正臣のものなんだという事実に興奮した。 「こんなことで勃起させるなんて……まあいいでしょう。今日はご褒美をあげるんですから」 ※  もう何度射精したか覚えていない。もうなにも出ない気がする。  自分のからだもシーツ代わりに敷かれているビニールシートも、俺自身が吐き出したものでぐちゃぐちゃになっている。 「あっ、ひぃ……も、おわり、おわって」 「いえ、ご褒美はまだありますよ」 「ごほーびいりゃない! も、むりぃ!」 「無理じゃないだろ? 今日はお仕置きはしたくない」 「ごめ、なさ……あっああっしてください! ごほーびもっとください!」 「いい子だ。じゃあ、私に背を向けるように横向きになって」  垂れ落ちた精液やローションで滑りそうになる。それでもがんばって俺は正臣に背を向けるように横向きの体勢になった。 「これが最後のご褒美だよ」  背後からおたまじゃくしにくるんとした尻尾が前後に二本生えたような白いものを見せられた。 「知ってる?」 「知らない……」 「大丈夫。これはエネマグラといって、医療器具だよ。安心して、怖いものじゃないから」  正臣の指が体の中に侵入する。その指に纏ったローションの冷たさが気持ちがいい。  数回掻き回されたところで、正臣の指は引き抜かれ、別のものが入ってくる。 「入ったよ。どう?」 「よく、わかんない……です」 「中に入れたやつ、出そうとしてみて」  言われるままに少し息んでみるが、どういうわけか全く出てこない。  もう一度、少しお尻の穴を窄めて開く。やっぱり出てこない。またもう一度と、中に入れられたそれを出そうとして何度も繰り返す。 「ん……ッ?!」  よく正臣が指で刺激してくる、前立腺といって気持ちのいい部分がある。そこを中に入れているエネマグラが刺激しているのだ。  それに気が付き、なるべくお尻を動かさないようにしてみたが、お尻の孔は意に反してヒクヒクと動いてたまらず中のエネマグラをギュウッと締め付けてしまった。 「あっ、んぅううっ!」  中のそれが、前立腺を押し付けてくる。 「なん、で……っ、おひりっ! 動かしてないのに! 勝手に動くよぉ……嫌、ああっ!」  からだがビクリと跳ねた。イッたと思ったのに、射精はしていなかった。  一番奥をこじ開けられるような深い快楽とは違い、強制的に快楽を浴びせられるような感覚だ。 「も、むり……きもちいのとまんない! あっ、ひ! とって、中の、取って!」 「ご褒美ですよ。極楽のように気持ちいいでしょう。それとも、気持ち良すぎて地獄かな」  もうずっと、口は開きっぱなしで喘いで、汗なのかよだれなのか顎から水が滴っている。  頭がくらくらする。からだと心と頭がバラバラになった感覚だ。  正臣が俺の乳首を摘まむ。ビリビリと電気が走ったようにからだが痙攣する。 「あ、うそ、出る……あ、ああっ」  突然襲ってくる尿意に泣きそうになる。  必死に我慢するのに耐えられず、ぶるりと先端が震えるとついにぷしゅ、と先端から液体が漏れる。あとは勢いよく噴き出した。 「あ……ああっ」  ぱたぱたとビニールシートにおしっこがまき散らされた。 「ごめんなさい、俺っ……お、おしっこ」 「大丈夫。上手に潮吹きできたね」 「潮、吹き……?」  よかった。おしっこじゃないんだ。そう思うと急激に安堵感が襲ってきた。  意識が遠のく。  目を開けているはずなのに目の前が薄暗くなっていく。 「気持ちよかった? カイ……」  意識を飛ばす少し前にキスされた。  気持ちいい。  からだの快感の何倍も、正臣のキスの方が気持ちよかった。

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