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第12話
※
「正臣さん、おはようございます」
あの日から、調教は正臣の家で行うことになった。
正臣の仕事が終わってからになるので、店で会うよりも遅い時間から調教は始まる。
次の日が試合の時は自宅へ帰るが、それ以外は今日みたいに泊まらせてもらって直接道場へ行くようになった。
家で会うことにした理由を聞いても正臣は教えてくれないけれど、なんだか幸せなのでそれでいいと思っている。
「ん……おはよ。カイは何時に出るんだ?」
「えっと、今日はお昼、十二時からです」
「そう、同じだな……まだ時間がある。おいで」
現在時刻は午前八時。また、布団の中に引きずり込まれた。
こんな朝は、布団の中でずっとキスをする。
優しくて、柔らかなキスだ。
夜の激しい調教が、嘘のように。
そのまま二度寝して、慌てて起きて家を出る準備をする。
正臣は電車で。俺は自転車で。目的地へ向かうため反対の方向へ進む。
「お疲れ様です!」
「お疲れさん。どうしたカイ、最近ギリギリだぞ」
「す、すみません。ちょっと二度寝しちゃって」
「明日大ホールの試合なんだからな。シャキッとしろよシャキッとォ!」
「すみません。着替えてきます!」
更衣室で着替えていると、加納が入ってきた。
「カイさん、お疲れ様でーす」
「あ、加納お疲れ。明日の試合、メインだよね?」
「そうっす! 何気に大ホールでシングルのメインってはじめてなんで、めっちゃ緊張するっす」
「がんばって」
「あざっす!」
着替えるが、加納はまだ更衣室を出ていかない。
「ん? 加納まだ、行かないの?」
「着替えるの、見てていいっすか?」
「ダメ」
「ええ~ちょっとだけ!」
「バカ、早く行けよ!」
こうやって加納とも冗談を言って笑いあえるくらいには、普通に接することもできるようになっている。
明日の大きな大会が終われば、また少し長い休みだ。
その間は、ずっと正臣と一緒にいる予定になっている。
こんなに一日一日が楽しいのは久しぶりだ。
大きな大会も超満員札止めで幕を閉じた。
打ち上げでは社長が「そろそろ月末大会の会場をもう少し大きなところに変更しようかと思う」なんて嬉しい話をしていた。
二次会へ向かう仲間と別れ、俺は正臣のマンションへ向かった。
インターホンを鳴らして部屋へ入れてもらう。
「いらっしゃい、カイ」
「お邪魔します」
いつものようにタオルを渡され、汗をかいたからだをシャワーで洗う。
そして裸のまま、正臣のいる寝室へ向かう。
「おいで、カイ」
ベッドに座っている正臣に呼ばれ、素直に従う。
「ケツマンコを俺に向けて、上に乗るんだ」
尻を正臣の顔に向け跨る。硬く反り勃った正臣のそれが目に入ると口の中に唾液が溢れた。
勝手に正臣のそれにしゃぶりついてはいけない。
以前良かれと思って勝手に舐めたらひどい目にあった。
きちんと待てをして、正臣の許可が出てからでないと、舐めてもしゃぶってもいけないのだ。ごくりと喉が鳴る。
「舐めていいよ」
「はい!」
許可が出た。正臣のそれを口へ運ぶ。
喉の奥を使ってじゅるじゅると音を立ててしゃぶる。
硬くなった正臣を自分のケツマンコへ入れた時を想像しながら、咥内で愛する。
「あう……んっ」
つぷ、つぷと小さなものが体内へ入っていく感覚に思わず正臣を口から離してしまった。
「物足りない? 大丈夫。すぐ気に入るよ」
振り返って正臣の方を見ると、俺のケツマンコから黒い玉が連なったものが垂れていた。今入っている分は大きくないが、まだ入っていない分はとても大きい。
「ね?」
ローションを足されながら、ひとつひとつ入れられていく。
「あ、ああっ。あぐっ!」
「たくさん、入ってるよ」
「あ、も……苦し、入んないっ」
「これからが楽しいんじゃないか。この残る大玉四つを入れると、先に入れた小さな玉はどうなるだろうね?」
ぷちゅ、ぷちゅと入っていく玉の大きさが苦しいのに加え、先に入っていた小さな玉がどんどん奥へ押し込まれていく。
「ひ、う……うあ、あ、ああ! やっ!」
「そう、カイの大好きな結腸に届くよ」
正臣の手は玉を入れるのをやめようとしない。
「あひっひあぅ! あ、むり、も無理ィ!」
「頑張って。あと、一個だから」
「あ、ギッ……ぐぅぅう!」
「ほら、全部入った」
きゅうぅっとケツマンコが収縮する。俺と正臣の密着している部分が汗ではない何かでねっとりと濡れていた。気が付かないうちに射精していたらしい。
「あっ、ああ……ごめ、なさ」
「いいよ。もっと気持ちよくなって」
「はひィッ!」
ぽこん、と玉がひとつ引き抜かれた。
「まだあるよ。たくさん入ってるからね」
ぽこん、ぽこんと引き抜かれる度に、永遠に終わらない排泄を続けているような気分になる。なのに、気持ちいい。
「ひ、あ、あぅ……ああっ!」
最後小さな玉が一気に抜かれ、ぐったりと倒れ込む。
からっぽのケツマンコが疼いた。
もっと中に欲しい。もっと太くて熱いものが。
脱力したままでいると、ケツマンコに何かが添えられた。
「次はこれを入れましょうね。大丈夫、カイの大好きなディルドですよ」
ディルドの亀頭部分が埋められていく。
それじゃない。俺が欲しいのはそれじゃなくて、正臣が欲しい。
「ま、まって。あの、俺をこれで、犯してください。もう俺のケツマンコ、トロトロなんです。これを……正臣さんの、オナホにしてほしいんです」
まだ目の前で硬く勃ち上がっている正臣のそれを握りしめる。
正臣のそれは今まで俺の口にしか入れてもらえない。これが欲しい。
「どうして? カイの大好きなディルドじゃ駄目なの?」
正臣はいつも理由を聞く。
「正臣さんが、欲しいんです……ひんっ!」
先っぽが入っていたディルドが引き抜かれた。
「どうして?」
どうして正臣が欲しいのか。
ああそうか、簡単なことだった。
「俺、正臣さんが、好きです。好きだから……正臣さんが欲しい」
「そう。ありがとう、カイ」
俺の下にいた正臣がそこから移動し、俺の背後に回った。
尻を両手で掴まれて開かれる。
「挿入れるよ」
ずぶずぶと今まで感じたことのない熱いものが入ってきた。
「あ……ああっ! んんぁ!」
気持ちいい。どうしようもなく、気持ちいい。
密着している部分から溶け出しそうなくらいだ。
出て、入って。出て、入って。それを離したくなくて締め付ける。
口からはだらしない喘ぎ声が漏れるが、気にしてられない。
正臣のそれがずるりと出ていくと、正臣は俺のからだを仰向けになるよう促してくる。
言われるまま仰向けになり、足を大きく開く。
また、硬いそれが入ってくる。
「まさ、おみさ……あっああっ、きもち、いい!」
ぷしゅ、と反り返った俺の先端から潮が溢れ腹を濡らす。
「ごめんね、カイ……っ!」
「ぐあ、んんぁあっ!」
一番奥に、正臣のそれが入り込み、中を熱いものが満たしてくる。
どく、どくと溢れるそれは、正臣の精液だろう。
その感覚を最後に、意識が途絶えた。
意識が途絶える寸前に聞こえた「ごめん」と「愛してる」は、都合のいい幻聴だろうか。
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