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第2話

 楠田一都はうまく竜我の家に上がり込んだ。  竜我の住みかは都内の一等地にある高級マンションの一室で、この一週間、万治は一都の世話に通っていた。竜我は一都の具合が気に入ったらしく、また、一都も今までの女と違って逃げ出さないので万治が思っていたより長く続いている。というより、竜我が毎日一都を抱いていることが意外だった。  竜我はホモではない。だが、殴れて穴があれば人形でもいいと前に溢していたことがあるだけに、男でも関係ないようだった。  昼頃に万治が部屋に行くと一都はベッドで死んだように寝ている。肩から下は殴られたアザだらけで、鞭やパドルが床に落ちている。  竜我はてっきり性行為に関して淡白なのかと思っていたが違うらしい、というのはこの一週間で思い知らされた。  寝ている一都が寝返りを打つ。首にアザがある。手を使って絞めたアザだとわかり、近いうちに上司の精液臭いこの男の死体を山に埋める仕事ができそうだと嫌な想像をする。  片付けをして、浴槽に湯を張る。買ってきた惣菜を温めて、寝室に持っていくと一都が目を覚ましたところだった。 「あっ」  万治を見て細い体をびくっとさせ、萎縮する。  殴っているのは竜我だけで自分はなにもしていないのにと自分よりいくらか若い男を見て不満になる。風呂も飯も部屋の片付けも誰がしてやってると思っているのだろう。 「あ、ま、万治さん」  そんな不満を嗅ぎとったのか「ありがとうございます」と小さな声で礼を言う。  ありがとうと言われると満更でもない。急にすっとして、自分の軽さにあきれながら万治は上司の家を後にした。

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