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第4話
七月。
鳥取からアホみたいに長いドライブを終えて、深夜になってやっと東京に戻ってきた。飛行機嫌いな組長を屋敷に送り届け、マンションに戻るのも億劫なほど車に疲れていた竜我は手近なビジネスに部屋を取った。セミダブルしか部屋が取れなかった。
万治に楠田を呼び寄せさせる。ロビーで楠田を待ち、到着すると、万治に金をやり休ませた。
鳥取の千ヶ会の会長がなくなり、葬儀に顔を出さなければならなくなった。若い頃、千ヶ会に世話になっていたこともあり、組長の護衛を兼ねて竜我も顔を出した。癌に寿命を吸われた会長はきれいな作り物のような顔で眠っていた。
葬式は嫌だ。好きなやつなんていないだろうが、ヤクザになって人の死が身近になっても慣れない。
護衛の智弘とロビーに入ってきた楠田は五日ほど見なかった間に何となく痩せたように見えてどきっとする。元々、細いだけに妙に不安を誘う。
「ちゃんと食ってたのか、お前」
「え、あ、うん。一応……でも、ずっと食欲なくて」
少し迷う。
疲れているし楠田を抱いてすぐにでも横になりたいが、今すぐなにか食わせないと抱いてる最中に倒れそうだ。
万治に呼び出させてから三十分もかからずに到着したこの男は、起きて待っていたらしく「ふあっ」とあくびをする。深夜に帰るから寝ていてもいいと伝えたはずだが、呼び出されることを考えて起きていたのだろう。
眠気に負けまいと目を擦り待っている楠田を想像して、何となくそわっとする。
「智弘。『dip』に行って食い物買ってこい。後、酒も」
「はい」
『dip』はシマのキャバクラだが、この時間営業している店の中で一番飯がうまい。ママのルイスは元々フレンチレストランで十年、割烹料理店で二十年働いていた実績があり信頼できる。
「お腹減ってたの?」
「まあな。部屋に行くぞ」
楠田の腰を抱く。尻を触るとプラグが入っているのがわかり、ぞくぞくする。眠いくせに。今すぐに押し倒したい衝動をこらえ、エレベーターに向かった。
組の幹部が男にハマっていると噂になっているが、商売女がアザだらけになるより、素人男がアザだらけになった方が組のシノギに影響がないので誰もなにも言ってこない。
むしろ男にハマった竜我を白い目で見つつも、悪い癖が落ち着いたことの方を周りは喜んでいる。
テレビカードを買って部屋に入った。狭い部屋。楠田をベッドにやり、風呂トイレ一緒の三点ユニットバスでシャワーを浴びる。においそうなところを重点的に洗った。女とやる時はここまで気にしなかったのに。
バスローブを着て出ると、楠田がベッドで膝を抱えるようにして映画を見ていた。その後ろに座り、抱き抱える。楠田のうなじのにおいを嗅ぐ。
「りゅ、竜我さん……?」
「ほっせぇ首」
うなじの骨をなめた。味のない皮膚。ただ舌にぼこぼこと骨を感じる。
ぴくぴくと楠田が震え「んっ、んっ」と声を漏らす。男の声なのに色っぽい。
そうやって遊んでいるうちにスマホが鳴った。
智弘からだった。出ると部屋の前に来たという連絡で、扉を開ける。
「これ、サンドイッチとワインです」
「助かる」
紙袋を受け取り扉を閉める。チェーンをかけ、袋からタッパーに入ったサンドイッチを出す。
「楠田」
呼びかけると振り向いた。タッパーを投げて渡す。楠田がキャッチしてきょとんとする。
「あ、えっと」
「食ってみろ」
ワインを開けてグラスに注ぐ。
「竜我さんは?」
「俺はこっちでいい」
口をつけていいワインだと気づいた。ルイスにかもられたらしい。まあ、不味いものよりはいいかと諦める。
飲みながらベッドに行くと、楠田が遠慮気味にサンドイッチをかじる。
「あ、おいしい」
ビーフカツサンドだ。
「お肉久しぶりに食べた」
「はあ? 智弘にちゃんと運ばせただろうが」
「なんかお腹減らなくて」
「お前痩せすぎなんだから吐いても食え」
五つ入ったカツサンドをひとつ手に取って食べる。ミディアムの肉が甘くて確かに絶品だし、このくそ暑いのに揚げ物を作ってくれたルイスには感謝だ。ワインにも合う。
楠田は小さい口で食べ進め、竜我のグラスからワインも少し飲んだ。
「食欲、なかったんじゃねえのか」
「そうだと思ってたんだけど」
パンくずがついた頬を噛む。
「先に寝る」
「あ、ま、待って」
楠田はタッパーをベッドに置き、竜我と向かい合う。そのままバスローブの中に手を入れて萎えたぺニスを取り出し、口に入れた。ちゅぷちゅぷと音を立てて吸われたり舐められたりするうちに勃起してくる。
楠田のフェラはたどたどしくて、気持ちいいというよりはくすぐったい。でもそれが癖になるし、嫌がらずに舐める姿に興奮する。
「ケツにほしいか?」
聞くとくわえながら「ふあい」と間抜けな返事をする。
準備してくるくらいだから、返事なんて聞かなくてもわかっているが。
「くわえてろ」
ぺニスを楠田の口の奥まで入れて頭を抑える。くっ、くっ、と、喉の締め付けを感じながら前屈みになり、楠田のズボンを下ろし、黒いシリコン製のプラグを抜いた。広がった穴がぐぷっと音を立てる。
「んー……っ」
楠田が喉を震わせた。
頭を抑えるのを止めるとずるっと口から一度出して、よだれまみれの口で息をする。ずすっと鼻水を手で拭った。
今のでぎんぎんに勃起したぺニスを手で軽く左右に振ると楠田がズボンと下着を脱ぎ捨てて跨がってくる。
濡れた穴がうまそうに肉棒を食う。楠田のぺニスがぴんと立って、反り返り、シャツの裾を汚す。
「五日ぶりのちんぽの味はどうだ?」
「んっ、ふ……あ、お、おいしい……」
頭がよさそうな顔をしているくせに馬鹿みたいなことを平気で言う。
言うと竜我が喜ぶと知っているからかもしれないが。
楠田の頭を掴んで引き寄せ、口を舐める。
最初はフェラした口とキスなんか絶対に嫌だったのに、いつの間にか平気になっていて、突っ込みながらキスすると中がきゅうきゅう締め付けてくることの方が重要に感じていた。
殴らなくても勃起する。会えないと苛立つ。この五日、暇を見つけては電話していた。万治はやや呆れていたが口煩く文句を言うほど野暮なやつではない。
楠田を押し倒し、軽く首をしめて腰を振る。
「はっ、あ、い、いくっ……」
前を触らなくてもぺニスが白い欲望を吐き出す。
竜我もやや遅れて中に出した。
ぜーはー息をする楠田にキスして痩せた胸をいじる。そうするうちに穴の中がひくひく動いて、その動きに刺激されて竜我の分身も大きくなる。
二回、三回と抱いて眠くなってそのまま寝た。三時間くらい寝てから起きて、楠田の体をきれいにしてやり、また寝た。昼前に二人で起きて萎びたサンドイッチを食べ、部下に車を手配させてチェックアウトした。
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