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ケモノの湯浴み2

「……温泉なんて、いつぶりだろうね」 竹でできた囲いの外から、川のせせらぎが聞こえてくる中、俺は朔ちゃんにもたれながら言った。「6年ぶりくらい?」 「下呂に行った時だろ。だったら、7年前だな」 「そんな前だっけ?」 「そんな前だって。同棲1年目の頃だし、よく覚えてる。あの時って、思い立ったらレンタカー借りて色んな場所行ってただろ」 朔ちゃんに言われ、あぁ、と思い出す。そんな頃もあったなぁと懐かしくなり、胸のうちがほかほかと暖かくなってくる。 「下呂行って、江ノ島行って、秋川渓谷行って、さがみ湖行って……」 「埼玉に芝桜を見に行ったし、新幹線使えばいいのに、仙台まで車走らせて、牛タン食べたこともあったよな」 「あった。帰りに車中で大喧嘩した時だ」 俺は肩を揺すって笑った。朔ちゃんとのドライブデートは良いことも悪いこともあったが、今となってはどれも良い思い出だった。 「……落ち着いたねぇ、俺たち」 笑い声をまじえて言う。10年前に出会い、何だかんだありながらも付き合い始め、4年目に突入と同時に同棲し、結婚して2年が経った。朔ちゃんと過ごしてきた時間は、笑いあり、涙ありといった表現がぴったりだ。 その中で、互いへの気持ちや信頼感が地に深く根ざしていき、結婚する前から周囲からは「熟年夫婦って感じ」と言われていた。確かに、そうかも知れないな、と思う……── 「いや、そうでもないだろ」 きっぱりと否定され、思わず眉が蠢いた。「どういうこと?」と振り返って朔ちゃんを見ようとすると、腰のあたりに何かが当たり、びくっと震える。 「こっちは、昔からずーっと変わらねーじゃん」 「……ちょっ、ちょっと……!」 朔ちゃんがぐいぐいと押しつけてくるモノに、俺は心底狼狽えた。よろよろと彷徨った末に、視線は朔ちゃんをとらえる。 ウェーブパーマをかけたツーブロックの黒髪は濡れ、しどけなく掻きあげられていた。健康的な肌色の顔はほんのりと紅潮している。形のよい双眸はやんわりと細まっており、血色が良くなった唇には、にまにまと弧が描かれていた。 正統派を地でゆくような美丈夫なのに、それを台無しにするよからぬ表情だった。危機を察知するも、時は既に遅し。逃げようと身を引こうとした俺は唇を塞がれ、舌の蹂躙を許してしまった。

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