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ケモノの湯浴み4

「……や、ダメだって……声とか音とか、隣の部屋まで聞こえちゃう……!」 「いいだろ、別に。聞かせてやろうぜ」 「な……!」 これには、二の句が継げなかった。何を言ってるんだ、コイツは。そんなことしたら公然猥褻な上、営業妨害で捕まるのでは? 軽犯罪者の烙印を押され、社会的な死が待っているのでは……? 「お前の声聞いて、周りの客も興奮するって」 興奮した息遣いと艶めいた声だった。朔ちゃんは俺の裸体に手を這わせ、昂ぶった性器を腰に擦りつける。 「色っぽくて綺麗で、可愛い声。俺を必死に求めてめちゃくちゃになるよな」 「あぁっ……やめ、て……!」 ダメだ。どうにかして朔ちゃんを止めないと。どうすれば、どうすれば……! 「……嫌だ……、俺の声、朔ちゃんにしか、聞かせたくない……っ」 陶酔状態にある脳みそで必死に考えた末に、俺は品を作った声で、朔ちゃんに懇願した。 「朔ちゃんにだけ、見てほしい……聞いてほしい……」 理性が保たれている中でこんなことを言うなんて。あまりにも恥ずかしくて、顔が燃えそうなほどに熱くなった。これはきっと後から思い出して、喚きたくなるパターンだなと確信した。 けれども、これで朔ちゃんが考えを改めてくれるのなら。それくらいの精神的ダメージは耐えてみせる……! 「……馨」 ぼそりと掠れた声で朔ちゃんに名前を呼ばれ、背筋がぞわぞわとする。 「……ん?」 「今の、すげぇグッときた」 「……じゃあ、言う事聞いて? ね?」 「何言ってんだ」 朔ちゃんはそう言って、俺の首筋に顔を埋めてくる。「お陰でもう収まりがつかねーよ」 「へ? ……うひゃっ!」 じゃぼんっ、と何かが温泉に落ちたような音がしたかと思えば、臀部や割れ目の奥にある窪みにそれが触れた。俺は目を丸くしながら、ひっくり返ったような声を出した。

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