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<智紀>6:そんなこと、はこんなにも残酷で
「え?そんなこと?」
思わず僕が口にすると岡崎が僕の後頭部を叩いた。
「いってええ!!」
「そんなことじゃないわよ!もっと誠のことも考えなさいよ」
「…俺もそう思うぜ、智紀」
岡崎と山崎による誠ブチ切れ事件の憶測はこうだ。
つまり僕がSNSやり過ぎだと。
どこ行くにも撮影撮影で、ウンザリしていたところ
僕が止めを刺してしまったんじゃないかと。
「でも誠は何も言わなかったよ」
「我慢してたんじゃないの?そんなことくらいで言うの女々しいし」
撮影しすぎて周りの目など気にしてなかった。
別に迷惑かけていたわけじゃないし…
「あんたはそう感じてなかっただけで、誠は恥ずかしかったとか」
そう言えば、焼肉の時に誠は早く食べようぜとチラホラ店員の方を見ていた。
タピオカ屋に行った時は周りの女子高生に見られるのを恥ずかしそうにしてた…
「…そうかもしれない…」
「俺も経験あるけどさあ、撮ってる人ってもう夢中だから一緒に来てもほっとかれたりして寂しいよ。話しかけても返事とかテキトーだし」
「…うっ」
「ヤベッ、これも図星かよ!」
「あと、これは私の勘ぐりしすぎかも知れないけどね」
ふと、岡崎が優しい顔をしてこっちを見る。
「せっかく二人だけで行った所をさ、ぜーんぶ記録してそれを全世界に発信してるんでしょ?誠は二人だけで共有したかったんじゃないかしら」
「…あー…」
岡崎の言葉が大きな矢になって、僕を貫いた。
特盛りの食べきれないロースかつ丼
浮き輪で波に揺られてる俺
美味しかったかき氷
砂辺に落とした、花火大会のイカ焼き
もし、誠が二人だけの景色として記憶していたかったなら
思い出を二人だけのものにしていたかったとしたなら…
僕は何てひどいことを気が付かないうちにしていたのだろう。
「ちょっと、智紀!泣かないでよ」
ギョッとして岡崎が驚く。
「だって、僕…ひどいこと…した」
ポロポロと涙が止まらない。
どうしよう、これで誠が僕から去って行ったら。
誠はきっともう、僕に対して「冷めて」しまっている。
もう誠と一緒に居られなくなるなんて。
あの笑顔を見れなくなるなんて…!!
どうしよう…!!
「…智紀、お前の取り柄はその正直さと、可愛さだ!いいか、お前に今できることはただ一つだ!」
山崎が突然立ち上がり、僕を指差した。
「今からダッシュで、誠の家に突撃だ!!!」
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