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五
会長が弟分かわいさに彼に俺のことを頼んだということだろうか。
それはありえそうな話だ。自分の恋人よりも俺をとりそうな会長の能天気な顔を想像して頭が痛くなってくる。
好きな相手の願いなら風紀委員長である彼だって動いてしまいそうな気がする。
優しくて誠実なタイプだから今までのことがウソだなんて思いたくない。
それでも愛をうまく信じられそうにない。
一枚や二枚じゃない大量の壁一面に貼られた写真のインパクトは相当なもので俺は汗を流しながら鳥肌を立てていた。
「栄司くんは残念ながら弄ばれていたんでしょう。言いにくいですが……」
「言いにくいなら言わんでいい」
「現実を見るんです! 普通に考えてあんなことしてる人間がきみのことを好きなわけがないっ」
「追い打ちかけないで……。副会長さんって、ホント無神経だ。いじめ反対」
「栄司くん以外に友達がいいないことで有名な私を舐めないでください。人の気持ちなんかまったく理解しませんよ」
「すこしは理解しろよ」
なぜか偉そうにふんぞり返る副会長はたしかに友人はいないが信者が多い。
人の尻の形を収集する変態でも見た目がいい上に優秀なので許されている。
この学園はおかしい。
顔面と才能格差の社会だ。
俺がこれといって特出した性癖がなくても顔面、才能が平凡であるという理由で袋叩きにされる一方で副会長は変態でも許されている。
容姿と頭が優秀でも人格的に周囲とは相容れないので信者や同僚はいても友人は俺以外いないらしい。
「友達とか生きていく上で何の足しにもならないので栄司くんだけでOKOK」
「それはようございました」
「さて、栄司くん! これからどうする? どうするどうする。冬式委員長と別れるのかい? きみはどうなるんだ? 中学のころの地獄のリンチ地獄の地獄に落ちてしまうんだろうか!? だいじょうぶなのかい?」
「……ホントに友達甲斐のない」
副会長は地獄を言いすぎているが中学の時、あながち冗談でもない地獄の中にいた。
無邪気な子供のいたずらと陰湿な嫉妬とが入り混じっていてつらかった。
助けてくれて世話を焼いてくれたのは中学の時も風紀だった彼だが、こうなると自主的ではなく会長に頼まれて守ってくれていた可能性は高い。
風紀としての枠を超えて一緒にいてくれて特別だと言ってくれて俺はコロッと彼に夢中になってしまったが冷静に考えると俺に都合がよすぎる展開だった。
「俺のいいところって何だろう」
「いっぱいあるね。……たとえば、この私と友達でいてくれるところとか!」
「あぁ、うん」
「疑っているのかな? 私は人見知りだから明け透けなく話せる栄司くんは宝物だと思っているよ」
「人見知りはともかく、ありがとう」
副会長は変わっているがこういうときに冗談は言わない。
口を開かない方が理知的で格好の良さが増すので俺の前以外だと無口なクールキャラを装うことはある。
その姿の方が人気が高くてイメージがいいので人が多いところでは副会長に声をかけないようにしている。
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