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7 冬式風紀委員長視点
冬式風紀委員長は清廉潔白、公明正大の人格者、なわけがない。
そんな理想的な人間が生きていられるほどこの学園は甘くなかった。
酸いも甘いも知らずに歩んでいけるほど平和な場所じゃない。
「栄司といちゃいちゃしたーい、栄司がたりないよーん。えいじえいじー」
オレの人生がつらく厳しく逆境ばかりなのは目の前にいる頭のおかしな奴のせいだ。
これはもう絶対に間違いがない。
初等部からずっとオレのとなりにへばりついている疫病神。
こいつの厄介なところは自分の言動が人を振り回すという自覚がないところだ。
理不尽のかたまりの癖して要領よくおいしいところを掻っ攫っていくクズ。
転校してもいいから縁を切りたい。
学園の外で見かけても声をかけたくない。
それほどにオレの天敵だがあふれ出る憎しみを押さえこんでも相対しなければならない理由がある。
「栄司は今日なに作るって? なあなあ、夕飯なによ」
「おまえに食わせる栄司のメシはねえよ」
「あるよ。栄司は作ってくれるし、足りなかったら栄司の分をくれるし」
こいつの吐き気を催すところが、これだ。
平気で栄司のものは自分のものだと思っている。
遠縁というだけで栄司を子分扱い。
下僕だとでも思っているのか無理難題をふっかけてワガママの限りを尽くす。
昔からずっとこんな感じだからか栄司は諦めている。どう考えてもおかしい。
年下に甘えまくって一人で幸せになっている。
こいつの嫌いなところは生徒会長であるにもかかわらず大前提として無責任。
兄を気取って栄司の面倒を見ていると口にしているが、実際は栄司に面倒を見てもらっている立場だ。
その癖、栄司のピンチには役に立たない。
困っている栄司がかわいいから生命の危機に直面しない限りは手を出さないと言っていた。
心の底から生徒会長を辞めて栄司から距離をとって一人淋しく誰にも迷惑かけない方法で死ねと思う。
呪い続けて何年経ったかわからないが、目の前の会長という肩書のクソはクズだが栄司はかわいい。
人として大切な物を育めなかったクズを反面教師にしているからか、栄司は一人で何でもできる子だ。
達観しすぎて少し甘え下手かもしれないが、警戒心ゼロですり寄ってきてくれた時のかわいらしさはヤバイ。
栄司は世界の至宝だと思うがクズに対してのバリア機能が備わっていない。
かわいそうなことにクズを間近に見て育ったせいでクズを身内だと誤った認識をしてしまっている。
こんな人類とはいえない相手を兄と思わなければならないなんてオレならストレスで死ぬ。
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