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栄司との出会いは風紀として仕事、トラブルの対策を通じて知り合ったわけじゃない。
クソでしかない会長を名乗るクズからの直接の紹介だった。
紹介の仕方はこうだ。
『平々凡々な見た目だが世界的写真家の息子の栄司だ。俺は栄司と専属契約を結んでる。栄司以外が撮影した写真を何かに使用したら肖像権の侵害を訴えるから風紀として取り締まりよろしく』
これは盗撮に対する被害を緩和するために遠縁である栄司を盾にしたんだろう。
撮影者が栄司以外の場合はどれほどよく撮れていても会長は破棄を命じた。
いつでも適当に見える男だが意外にも写真に関してだけ会長はお目こぼしやその場のノリでOKを出すようなあいまいなことをしなかった。
徹底して栄司以外が撮ったものはデータも現物も消し去った。
写真の良し悪しは分からないが、とにかく会長がわざわざ宣言してきたのだから風紀として対応せざる得ない。
会長の写真を入手したら栄司に見せて、撮影したのが栄司なのか、栄司ではないのかを確認するという作業が風紀の業務に組み込まれた。
手を抜いていいように思えるが、風紀ではなく会長というクズ自体が動き出したら生徒が漏れなくひどい目にあう。
目に見えたトラブルを事前に回避するために風紀として動かないわけにいかなかった。
あくまでも風紀の監視下の元で罰則を与えなければ生徒にとって悲惨な結果になる。
ある程度のルールの上での罰と常識のない私刑では後者の方が酷くなるのは誰にでもわかる。
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