「ついたら起こしてくれ」 こんな馬鹿なことをしたのは、単純に「自分の価値」を再確認したかったからだ。 「ちょっと。何今のセリフ。暇つぶしって言った？」 「安心しろ。監禁生活を日記に書くつもりはない。」 「はぁ？何の話？」 「宿題の話だ。お休み。」 「はあああ？何言ってんだ？」 男は心底驚いたようだ。 誘拐犯の素っ頓狂な声に、痛む頭で錦自身が的外れな事を話していたと理解する。 誘拐される立場の人間の態度ではなかったようだ。 目的地についたら、この男の仲間がいるのかもしれない。 多少の暴行は覚悟するべきか。 そうなれば夏休みの課題などできる環境を期待しない方が良いだろう。 早々に課題は諦めた。 何をされるか分からないが、女では無いので性的なものではないと信じたい。 仮に女であっても小学四年生の幼い体に何ができるのかという疑問があるが、誘拐犯が小児性愛者ではないことを祈ろう。