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【10】違和感
参観日など黙っていても問題ない、小さな行事で有れば案内プリントを処分しても問題は無い。内容を見て、問題ないと思えば事前に処分をする。
しかし保護者出席が必須の三者面談となれば別だ。
ため息が出た。
襖を引きそこに繋がる母の寝室を覗くが、人の気配は無く畳の部屋が広がるばかり。錦は、母がいつも休んでいる和室に入り首をかしげる。こんな時間に何故部屋にいないのだろうか。そして、何気なく開いた明障子から母屋の裏側にある茶室との障子から淡く灯りが漏れていたのを見つけた。
母屋の本座敷とは違う風情で主庭を楽しむのを目的とし、西側には離れ座敷、裏庭に面しては茶室が設けられている。
こんな時間に茶室で何をしているのだろう。
暗闇で露地を楽しむことは無いだろうが、親子とはいえ母には母特有の感性があるはずだ。しとしとと降る雨に風情を見出す人間だってこの世にはごまんといる。
用事は明日にしよう。
そう思い障子を閉めようとしたが違和感に目を凝らす。
路地の木々の間から朧げに見えたのは、躙り口から入る誰かの姿だ。
小さな出入り口から漏れ出た灯りに浮き出た姿は母ではなかった。
何故こんな時間に来客があるのだろう。仕事関係で緊急の連絡だろうか。
それならば、茶室など使用しないだろうし、母を訪ねてくるのはおかしい。
これではまるで、密会ではないか。
錦は障子を閉め、母親の寝室を後にする。
はっきりと形を成さなかったが、ひどく不安で嫌な予感がした。
だから、少しだけ様子を見ようと考えたのだ。
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