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【20】『答える価値のある質問なら答えるさ』

玄関扉を開錠し、錦を招き入れる。吹き抜けを採用した玄関は採光を取り入れ明るく開放感がある。想像通り掃除が行き届き傷みとは無縁だ。 「チェックインの時間は無いのか」 「うん。」 メインホールまでの廊下を抜け、通されたリビングルームは玄関同様吹き抜けで光を取り入れるために設けられた大きな開口部からは、デッキ空間と中庭と風に揺れる鮮やかな花々、さらに遠くなだらかな緑陵と海を眺望できる。額縁に飾られた風景画のようだ。 「なるほど。個人管理の別荘か?」 「うん。だから、他に滞在する人はいないから遠慮はしなくて良いよ。」 蒸し暑い部屋を予想していたが漂う空気は冷気を含んでいた。 真夏だと言うのに、冷房をつけているかのようだ。建物の標高が関係しているのだろう。 「避暑地と言ったな。ワンシーズンしか使用しないのに手入れが行き届いている。」 手入れの行き届いた庭を思い浮かべる。 「そうだね」 天井から下げられたシャンデリア、ラタン製の家具、ベージュで統一した壁。 全体的に柔らかな印象を受ける部屋だ。 なるほど、羽を伸ばすには丁度良い。 部屋を一周した視線は男に辿り着く。 彼は綺麗に微笑んだ。 「冷静だね。やっぱり、君は良い。」 「別荘管理人を雇っているという事か。それなりの資金がいるだろう。個人的な意見だが金に困っているようには見えない。それがなぜ誘拐しようと考えた。」 彼の行動に対する単純な好奇心だった。 目的がいまいちわからない。 「君が可愛かったからかな。」 「眼科へ行け。付き添ってやっても良いぞ。」 「視力には自信があるよ。そうじゃなきゃ、君を選ばない」 「誘拐のリスクを理解しているのか」 「誘拐されるリスクを理解してるのかい」 淡々と言葉を選ぶ錦に男は楽しげに答える。 「質問を質問で返すな」 「答える価値のある質問なら答えるさ」

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