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【28】そんなもの。誰が感じるんだ。
「君、自分自身の価値を考えたことある?」
「?」
「家とか親とか関係なしでさ。朝比奈 錦というただの子供の価値さ。」
当たり前だ。
考えて、考えて、その結果がこの軽はずみな行動だ。
言葉が出なかった。何も持たない俺の価値だと?
子供と言うだけで価値があると言いたいのか。
人間的価値なんて、そんなもの。誰が感じるんだ。
「難しく考えなくて良いよ。朝比奈とか関係ない。僕から見て君本当に可愛いんだもん。攫いたくなっちゃった。攫って、君と話してみたい。君の顔をじっくり見てみたい。君と仲良くなりたい。そういう事だって。」
「お前、捕まるぞ。」
子供の錦ですらお粗末と言えるようなやりかただ。目撃者など気にしていないような場所で声を掛けて車に乗せた。この別荘に来るまでどのような道を通ったかは不明だが(最も錦は眠ってしまい地理も不明だ)助手席にいた錦の姿を隠すようなことは一切していない。商店街などの人通りを避けていたとしても防犯対策や不法投棄防止の監視カメラにこの車のナンバーが記録されているはずだ。
「警察は動いていないよ。恐らく君の家もね。」
「証拠は」
「別に信じないならそれで良いよ。」
「…二週間で何ができるんだ」
「それは君の方が経験上よく分かっているんじゃないの?朝比奈家が二週間も時間をかけるかな?それにさ、僕と君の目撃情報は山程ある んだから、君のお家なら警察より早く見つけるんじゃないの。」
錦は無言でサラダボウルを引き寄せると、男がドレッシングをかけた。
中断していた食事を再開する。
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