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【30】クラスメイトの文集

「君、本当に両親とうまくいってる?」 「失礼な男だな。当たり前だろうが。」 じゃぁ、どう言う所が好きなの? そう繰り返された質問に、お前には関係ないと返せば良かったのかもしれない。 しかし、意地になっていた。 「俺の母は料理が上手いし優しいしいつも笑顔で、あと凄く綺麗だ。」 「自慢のお母さんだね。」 錦は頷く。小学二年生の時に行われた春の家族遠足を思い出した。 彼女が最後に参加した、二年前の学校行事。 美醜すらまだまともに理解できていない児童達が、母の美しさに見とれ羨望の眼差しを向けてきたのだ 「学校行事に参加した時はクラスの皆が羨む程だ。」 お父さんは?と男は笑顔で続きを促す。 「一緒にいるときどう過ごしてるの?」 「一日の出来事とか話してる。」 醒めた紅茶を飲み干し、一口大にカットされたキウイフルーツを口にする。 強い酸味を覚悟していたが、思いのほか甘かった。 「普段一緒にでかけたりは?」 「それは忙しいから無理だ。」 「寂しくないの?」 「忙しいから余り一緒にはいられないけど、笑顔で俺の話をよく聞いてくれるから別に寂しくない。」 「一緒に寝たりお風呂に入ったりは?」 「母とはないが父と偶に一緒に風呂に入ったり寝たりはする。」 クラスメイトの文集に有った内容だ。 「もう少ししたら止めないとな。」 家族の交流がテーマの文集で、酷く頭を悩ませた錦と違いクラスメイトの文集は暖かな日常が綴られていた。 他の家では当たり前のように行われている親子の交流に錦は衝撃を受けた。 本当なのかと信じられない気持ちだった。 今よりも幼い頃ですら、入浴はもちろん同じ布団で眠った記憶などない。想像すらできない。錦を無感動な目で冷やかに見下ろしてくる父とスキンシップなんて絶対に無理だ。

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