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出逢い編その2(瑛人side)
とあるイタリアンマフィア(犯罪組織集団)に1組の男女の日本人幹部が居た。彼等は夫婦であり、主に殺しを専門としていた。その間に産まれた子が1人。性別は男、名はエイト。
彼は両親の才能を引き継いでいた。両親が所属するマフィアで殺し屋として育てられた。外見も良い。物覚えも良い。身体能力も申し分ない。ただ唯一非があるとすれば、彼は自由人だった事だろうか。エイトは不必要に人を殺し、盛大に飛び散った血を見るのが好きだった。ボスや幹部達は組織が警察に睨まれて取引がし辛くなる事、他の組織からの恨みによる抗争を恐れ、エイトを処分しようとした。だが我が子を思う両親と手を組んだエイトは両親以外の組織の上層部を殲滅。その後、日本に密入国する事に成功した。
それからというもの、エイトは日本で殺し屋をしている。周藤家への暗殺依頼が入ったのは日本に来て4年目だった。
「随分大きな家だな」
依頼者からのターゲットは家主とその妻。他の家族や使用人達の生死は問わないとの事だった。
チャイムを鳴らせば若い女が出迎えた。
「えーと……どちら様でしょうか?」
「ここは周藤淳士とその妻、晴子の家で間違いないな?」
「え、はい、そうですが……?」
メイドらしき女の返事を聞いてエイトは玄関の鍵を掛けた。
「何をし……グェッ」
何をした、と言い切る前に女は妙な悲鳴を上げてその場に倒れる。ヒュー……ヒュー……と口から音が漏れ、喉から赤い血が流れ、床に広がっていく。エイトは女を一瞥し、屋敷の奥へと進んだ。
「メインディッシュは逃げられる前に仕留めなければね」
ターゲットである家主とその妻はリビングで見つけた。手に持ったボールペンを投げ、最も家主に近い男の喉に突き刺した。ペンの類はどこにでも売っている上、身体検査に引っ掛からないのでエイトが重宝している武器だ。
「ヒッ……か、金ならやる! 幾らでもやるから、女も欲しけりゃ好きなメイドを持って行けばいい。だから命だけは……」
「ふふっ」
「ひぃ……い……や……来ないで! 誰か! 誰か助けて!」
「さようなら」
次々と悲鳴が消え、床にまだ生温かい遺体が増えていく。いつの間にか高級カーペットが真っ赤に染色されていく。カーペットが吸い取り切れなかった血がエイトの靴の裏を汚していった。エイトの手によって周藤夫婦は首や心臓付近から血を流して死んだ。
「さて……あと残り何人だ?」
もうリビングに生者は居ない。エイトは2階に上がった。部屋を1つ1つ開け、見つけ次第命を奪う。
途中で1人息子のものらしき部屋を見つけた。しかしドアを開けても誰もおらず、物音もしない。部屋を使った形跡はあるが、只片付けない性質なのだろう。ドアを閉めて次の部屋へと向かう。
「屑な夫婦の1人息子、見てみたかったが外出とは運が悪かったな」
更に階段を登って3階に上がり、ベランダから見える庭を一望して屋敷内をもう一周する。屋敷はエイトが思っていた以上に広く、1部屋ずつ確認するのはかなり骨が折れる作業だった。
再びリビングへと戻って来たとき、動く人影が見えた。体格や服装から察するに、まだ成人してはいなさそうな男だ。血濡れたペンを握りドアの影に隠れる。
「お父さま……お母さま……死んで……る?」
声変わりは済んだのか、少年の声は低い。だが不安げな表情は親を求める子供だった。エイトはこれが夫婦の1人息子であると確信する。
「あ、居た」
「ひぃっ!?」
わざと少し離れた背後から声を掛ければ、少年は短い悲鳴を上げ、こちらを向いて短刀を向けた。勿論構えはなってないし、刃は鞘に納まったままだ。この家で今まで散々見てきた怯え顔とは違い、少年は静かにエイトと見合っている。エイトが殺気を放って近づいてもそれは変わらず、しかしエイトが少年の方へと歩く度、少年は少しずつ後ずさりした。
(嗚呼……これを殺してしまうのは勿体無い。触れたい……手に入れたい)
エイトは少年に欲情した。元々女体に興味を抱かず、マフィアに所属していた時も筋肉の少ない若い男ばかりを求めていた。
1分程かけて目を合わせたままゆっくりと近づいた時、少年の背中が壁に当たる。エイトは好機とばかりに一気に少年を追い詰め、腕を掴んだ。少年は怯んで顔を背けたが、暫くして恐る恐るエイトを見る。その様子にエイトの口から思わず欲望が零れた。
「抱きたい」
「……は?」
貴方を抱きたい。抱いて穢してしまいたい。快楽に善がる様を見たい。顔を近づければ少年は目を閉じる。エイトは堪らず少年に口づけた。
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