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出逢い編その5

 輝が他人の「それ」を見たのは初めてだった。同じ人間の男である筈なのに輝のよりも一回り大きくグロテスクなものを、輝の臀部にぴとりと当てた。死とはまた別の恐怖が輝を襲う。 「いや……だ」 「さっきは『さっさとしろ』と言っていたのに、我儘なお坊ちゃんだ」  エイトは容赦無く輝の脚を広げ、後孔にグロテスクなそれを捩じ込んだ。 「ひぃッ、いや、痛い……」 「もっと先程のような根性を見せたら如何です? 悲鳴を聞くのは楽しいが情けなく泣きじゃくられては興醒めですよ」 「知るかこのド変態野郎!」 「あぁ……イイですね」  込み上げた怒りをぶつけるようにエイトの腕に爪を立てて睨みつける。それが輝の精一杯だった。だがその程度の虚勢はエイトを喜ばせるだけであり、興奮させるには充分である。 「ほら、全部入ったのが見えますか? 見てください。この生娘のように流れる鮮血が白いシーツに映えて綺麗でしょう? まあ、すぐに黒くなってしまいますがね」  今生き残っているのは果たして幸運と呼べるだろうか? 一瞬で息絶えるのであれば殺された方がマシだったかもしれない。そんな輝の心情を嘲笑うかのように、エイトは独りよがりな快楽を貪り続けた。  真っ暗闇の中、輝は目を覚ました。エイトに欲望のままに何度も犯され、気絶していたらしい。電気を点けて周囲を確認したいが、痛みで体が動かない。その痛みと気怠さは、今までを長い悪夢だと思わせてはくれなかった。 「おい、居るのか?」 「やっとお目覚めでしたか」  試しに声を掛けると、答えになってない返事があった。人の気配はなかったが、エイトは側にいたらしい。気が済んで去ってくれていれば良かったものを、と顔を顰める。 「そんな顔をしたら皺が増えるらしいですよ」 「見えているのか?」 「勿論。貴方の機嫌が悪そうに歪んだ顔も、私が付けた身体の痣や跡もくっきりと」  輝からはエイトの顔は見えないが、「絶対楽しそうな顔をしているな」と思った。輝はもう何かを言うのを諦め、再び眠ろうとする。 「まだ寝るんですか」 「身体が痛くて怠くて起きているのが辛いんだ。それにお前の相手をするのも疲れる」 「貧弱者」  怒りは多少痛みを忘れさせるらしい。輝は声がした方に向かって枕を投げた。だが枕は何処にも当たらず、ボスッと音を立てて床に落ちたようだ。 「何だ、まだ元気が有り余っているではないですか」  揶揄うような笑い声が聞こえる。輝は顔だけそっぽを向いてきつく目を瞑った。 「自分以外の人間が全員殺され、自身が陵辱されてもなお、嘆き怯えたり私の機嫌をとろうとしたりしないだなんて……本当に愉快な子供だ」  エイトが体重を掛けてベッドに手を付いた。やっと輝にエイトの気配が分かる。輝の背筋がゾクリと冷える。 「何の力も無いくせに私と対等になろうとしたのは貴方が初めてなんですよ。だから……ずっと貴方の側にいたい」  輝のこめかみに触れるだけのキスが1つ落とされた。

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