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あなたが好きだと言ってるじゃない〜転〜4

「資料室。知ってんだよ、お前がそこであの人に抱かれてること。ほら、首にキスマーク付いてるし、乳首に歯形が残ってる」 必死で原くんの手から逃れようと、体を自由にしようと暴れる。 原くんはボクを再びあっさりと押さえ込むと、ボクの首筋にキスをする。 強く吸われて、痕(あと)を残される。 「やだ!いやだっ!」 部長以外の人に触られることが、こんなにも気持ち悪い!! 部長しかいやだ! 部長にしか触られたくない! 部長としかセックスしたくない! 「放して!やだ・・・いやだぁっっっ!!」 絶叫するボクに構わず、原くんはボクの乳首を舌で舐めて、きつく吸い上げる。 「ふあああっん・・・!」 体が勝手に反応する。 最近覚えた快楽が、じわじわと体を蝕(むしば)むのがわかった。 原くんは、ボクが快感に身を捩(よじ)ったのがわかったのか、しつこく乳首を責めてくる。 何度も舐めては、何度も吸われる。 体に力が入らない。 「やめ・・て・・もう、もう・・いやだ・・・はあんっ」 お腹から腰にかけて、指が走る。 それだけで腰が浮く。 「薫・・・感じ易いんだな・・・」 「ちが・・・違うぅ・・・」 「何が違うんだよ?こんなに腰揺らせて、いやらしい声出して。入れて欲しいんだろ?」 欲情した声で原くんが、ボクの耳元で言った。 後ろの穴が熱く疼(うず)いたのがわかった。 「やだ・・・やだぁ・・・!」 目に涙がにじんできた。 快楽のせいなのか、嫌悪感のせいなのか、もうわからなくなっていた。 部長以外は嫌だと心が叫んでも、体は抱かれることを望んでいる。 違う。 こんな・・・こんなボクは知らない! 原くんがボクのズボンのベルトに手をかける。 その時、急にドアが開く音がして、人の足音が聞こえた。 入って来たのは、眠そうに欠伸(あくび)をこらえる部長の姿だった。 ボクと原くんの姿に気付いて、部長ははっとしたように足を止めた。 「・・・どうして・・・?」 思わず呟(つぶや)いた。 今日は出張で帰って来ないはずじゃ・・・。 ボクと原くんも動きを止めていた。 ボクは部長にこんな所を見られてしまって、思考が止まっていた。 「ああっと・・・・悪い」 部長は気まずそうに視線を泳がせると、踵(きびす)を返して部屋を出て行く。 「部長・・・違う!!違うんですっ!!!」 ボクは動かない原くんを思いきり突き飛ばす。 机から下りて部長の背中を追った。 部長は外に出ると、振り返らずに、ドアを閉めた。 バタン、とドアが閉まった。 それは部長が、ボクを拒絶したようで。 ボクの話しを聞く気はないと、拒否したようで。 茫然と立ち尽くした。 次第に、ドアがぼんやりしてきた。 涙が溢れていると、気がついた。 「ちが・・・違うぅ〜〜・・・」 涙が止まらない。 嗚咽(おえつ)が止まらない。 気が付くとボクはその場に座り込んで、膝と頭を抱えて泣いていた。 泣いている顔を誰にも見られたくなかった。 部長に誤解された。 ボクと原くんがそういう関係だって、きっと誤解した。 違うのに・・・ボクが好きなのは・・・大好きなのは・・・。 もっと、早くに告白しておけば良かった。 そしたら、こんな誤解されずに済んだのに・・・素直に好きと、言えば良かった・・・。 「うっく・・・ふぅ・・・ちがう・・ちがう・・・」 「・・・ごめん・・」 頭の上のほうで、原くんの声がした。 ボクは顔を上げなかった。 原くんなんか、どうでも良かった。 ドアが開いて、閉まる音。 ボクは、一人取り残された。 部屋に一人。 ボクの嗚咽(おえつ)が、いつまでも揺蕩(たゆた)っていた。

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