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第7話

「残念だったな、新しい男とできなくて」 「あたらしい?」  家に着くなり陽之の服というか下に穿いているものを剥ぐように脱がせると、すぐにベッドの上に四つん這いにさせた。ねだられたけどイラついているからキスはお預けだ。 「お持ち帰りされてなにするつもりだったんだ? あ?」 「にゃああー!?」  周りが汚れるのも構わずローションを垂らすと、冷たかったのか陽之が変な声で鳴いた。四つん這いだから猫の鳴き声なのか。その様子からして完全に酔っているらしい。  ワックスがついたままで乱れた髪と脱がすのが面倒で残ったシャツのせいで、仕事場での陽之に手を出しているような感覚に陥りそうになる。さすがに職場でしたことはないから、これじゃあまるでそういうプレイのようだ。  お仕置きのつもりで手を出したものの、その事態を飲み込んでいないらしい陽気な酔っ払いの陽之は、その格好のまま俺を振り返った。妙にきょとんとした可愛らしい顔をしている。 「おもちかえりされたらセックスでしょう。それ以外ある?」 「は? じゃあ最初からヤる気で飲んでたのか?」 「そうだよ。あの時は、やいちゃんにお持ち帰りされたくて飲んでたんだから」  陽之の飄々とした言葉に一瞬かっとしたものの、続いた言葉で首を傾げた。  わざとなのか酔いのせいか話が混線している。俺は今の話、陽之は昔の話。  てっきり浮気の告白かと思ったけれど、どうやら本人にその気はないらしい。当たり前のように俺との話をしている。  この盛大な酔いっぷりからして器用に話を逸らせたとは思えないけど、それはつまりあいつに持ち帰られるために飲んでいたわけじゃないということか?  よく状況がわからず、さりとてこの酔っ払いにまともな説明を求めることもできずで真相はわからないまま。  それでも二人で飲んでいたことは確かだし、無防備にここまで酔っ払ったことも確かだ。  だからやっぱり俺が連絡の取れない時間をどう思ったか、体でわからせないといけない。 「ふああっ、や、あ、いきなり奥ぅ」  適当に指で慣らしただけで、後は追加のローション任せで貫くように挿入してやると、陽之が甘い声で啼いた。仕事の時とはまったく違う、とろとろに溶けたマシュマロみたいな声。  いくら酔って弛緩した体でもいきなり突っ込めばやっぱりきついらしく、陽之はベッドの上についた手を強く握り、苦しそうに体を震わせる。けれど何度か深く息を吐いてすぐに俺を受け止めた。それから焦れて揺れる腰を掴み、肌が合わさる音を聞かせるように突き上げてやる。  この時点でもうお仕置きの体は成していない。ただの酔っ払った陽之とのいつものセックスだ。 「あッあっ! やいちゃん、すごい野性的……っ!」  雑とも乱暴ともとれる俺の動きをそんな風に称して、陽之は気持ちよさそうに俺を奥へと誘う。  仕事自体がいい運動になっているためか、陽之の体は引き締まってとても綺麗だ。特にバックからしている時の背中から腰のラインはとてもそそるしなやかさ。細すぎずかといって筋肉がつきすぎているわけでもない絶妙な塩梅で、創作意欲さえ高まるからすごい。この体をもっと早くに知っていたら、きっとデッサンの授業にもっと身が入っていたに違いない。 「あ、ふ……あ、んっ、いい、それすき……っ」 「ここだろ?」  いわゆる前立腺を強く擦り上げるように浅く動いてやれば、陽之の声が気持ちよさそうにとろける。素直に認めたのが可愛かったから、覆いかぶさるように抱き着いて、回した手で乳首を摘まんでやった。 「これも好きだろ」  爪を立てるように少しきつめに。本来なら痛みに変わるくらいの強さでの刺激は、どうやら予期していなかったようだ。 「ひゃんっ! あ、いっ、あ……ああ……ぁ……んっ」  途端、びくびくと体を震わせドライオーガズムに達する陽之。もちろん本当にはイっていないから、何度気持ちよくなっても冷めることはない。  その姿に気を良くして、俺は自分が良くなることを考えて動き出した。  どうせ明日は休みだ。多少起きるのが遅くなったって支障はない。

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