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第40話

 「この黒いケースか?」 一条は、永井に言われるままそれを拾い、ふたを開けた。中には、注射器と針の入ったケースと透明の液体の入った小さな容器。そして、ケースに入ったSDカードが入っていた。 「これ。」 「ああ」 お互いに顔を見合し、コクリと頷きあう。おそらく、この中に画像や動画のコピーが入っているはずだ。と、確信めいたものが、二人の間で、過った。 「さてと。」 一条がSDカードを入れ、マウスで操作をし、画像を展開させた。 次々と永井が、最初に見せられた強姦された時の画像が、映し出されていく。一条には、観られたくない光景だったが、そんなことは言ってられない。一条の背中越しに永井はそれを凝視する。  一条は、苦々しげな表情で、目の前にあるそれを観ている。こんなことをした上に画像を送ることで精神的にも永井を痛めつけ、挙句に薬を飲ませて、また、あいつの身体を貪ろうとするとは、下衆以外の何者でもない。殴るどころでは、気がすまない。拳に力を入れ、湧き起こる怒りを堪える。 一条は、全部の画像が展開される前に一条は、それを消去した。 もうひとつフォルダがあり、それを展開すると、すぐに一条は先程発見した研修医室の盗撮動画だと分かり始まったと同時にそれを消去した。 「これ、画が荒いな。デジカメではなくてVHSビデオで撮られたもののように思えるのだが…」 「ビデオですか?」 「それが、こいつの元だ。研修医室にしかけていたのだろう。…お前観たさにな」 一条が、吐き捨てるように言い、SDカードを取り出し、それを真っ二つに割り、自分のポケットにしまった。 「俺ですか…」 「ああ。早いトコビデオ探さないとな。」 「はい。…あ、黒いケースは、本棚の本の裏にあったので、もしかしたら、ビデオも隠れてるのかもしれません。一番上の分厚い本を二冊どかしてみてください。そんな気がします。っ…」 永井は、小木が黒いケースを取り出した場所を思い出し、一条に指示する。 「何もないな。隣の本もどかせてみるか。…あ、これは!」 一条が、本を取り出しながら、裏に横向きに隠されていたビデオテープを発見した。三本とも『研修医室』というタイトルが、ふられていた。 本を元に戻し、ビデオだけを取り出す。 「はぁはぁ…。念のため…中身、確かめますか?」 永井が、布が擦れる感触に耐えながら、壁伝いに立ち上がる。額に汗を掻き乱れたシャツは汗で濡れ、その姿は誰が見ても痛ましくもあるが淫らでもある。 「その必要はない。それよりも、早くここを出るぞ。」 「でも…。」 「いいから!これは、俺がうちで処分する。他にもまだお前に関するものがあったら、そしたら、その時だ。」 「…分かりました」 一条が、振り向き、厳しい口調で言う。一条の圧倒的な迫力に押され、永井は、頷かざる得なかった。 「よし。それなら、おぶっていくから、荷物貸せ!」 「いいですよ!自分で歩きます。それに今、俺…ぁはぁ…すごい汚いですし、臭いですしおぶったりなんかしたら、先生の服…」 「前にも汚したことあるだろ?そんな苦しそうな姿で何言ってるんだ!?ほら!早くしないと小木が目覚める」 「……」 一条が怒鳴り、永井の前に背を向け、背を丸めた。永井は、どくんどくんと脈打つ下半身に棲む化け物と戦いながら、一条の肩を掴み躊躇いながらもその背中に身を預けた。そして、一条がビデオと永井の荷物を持つと、玄関から小木の家を飛び出した。 おんぶという状態は、非常につらい。 一条の手が、永井の腿に触れ、がっちりと尻を抱え込み、股間が、背に押し付けられる。 一条が動くたびにそれは擦れ、永井に快感をもたらしてしまっていた。 永井は、おぶられている間、目をとじ、口唇をかみ締め、漏れそうになる喘ぎ声も爆発しそうな自分自身も必死に我慢していた。  一条の車に着くまでのたったの6、7分の間だったが、永井には、非常に苦しい時間だった。  「っっっ!?」 車の前で、一条にゆっくり背中から下ろされ、縋り付くように一条の手につかまりながら、助手席に座った。 一条が運転席に乗った時、我慢していたものが、溢れてしまった。たれるまでは行かないが、スラックスの染みがまた濃くなった 口唇をかみ締めていたので、声は漏れなかったが、一条には、永井の表情だけでも永井の身体の異変が分かった。これは、早くなんとかしてあげなくてと、一条は、思い、車を走らせた。  「すみませ…はぁ…俺の事いつでも降ろしてください。俺…先生の車汚さない自信が…はぁはあ…ないです」 手で、口を隠し荒い息を吐きながら、永井が言う。 「車なら洗えばいい。俺に構わずいくらでも汚せ。そうやって、我慢している方がツライだろ?」 「先生…っはぁ…もうやだ俺……身体どうにかなってるし……はぁはあ…迷惑かけてばかりで…」 永井に視線を向け、優しい声音で一条が、言う。その眼差しが、あまりにも優しく温かくて、永井は居たたまれない気持ちになり、永井の瞳からは涙が溢れた。 一条の左手が伸び、股間に置かれた永井の右手をやんわりと握った。 「何も言うな。もう少しだから」 つらそうに眉を潜め、永井をみやってから、周りを確認し、車を止めた。 そこは、市営のテニスコートと一緒になっているわりと広い公園だった。 木が生い茂っており、薄暗くシンと静まり返っている。 「ここ…は?」 永井は、首を動かし虚ろな目で一条を見る。 「公園だ。」 一条は、自分のシートベルトをはずし、簡潔に答える。 「そうではなくて…」 「出せるものは、ここで出しておけ。」 「え?ここでですか?先生の前で?」 「俺はひとりでしろとは言っていない。そう言う趣味は俺にはない。」 「いや、そう言う意味で言ったわけではないのですが…。」 「俺が手伝うと言ったら、不服か?」 「ぁっっ…」 条の手がそっと永井の眼鏡を外し、コンソールにそれを置いた。 指先が米神に触れるだけでも、永井の身体は未だに過剰に反応し、 ブルッと身震いをさせ放射をした。 「…不服だなんてとんでもないです。すごく…嬉しいで…す。」 「そうか。んんっ……」 カチャリ。一条が永井のシートベルトを外し、覆い被さるように永井の口唇を塞いだ。  抵抗する理由などない。 永井は、本能の赴くままに一条の頭を抱え込み、口唇を貪った。 抱き締めるだけでも怯えていた永井がこんなにも大胆に自分を求める姿に一条は、一瞬驚くが、永井のスラックスのジッパーをおろしながら、求められるままに永井の口腔を思う存分犯していく。  「んんっ…ぁ……はぁぁ……っ」 片手でぐしょぐしょに濡れている昂ぶる永井自身を外に開放させ、求められるままに頬に手を添え、キスをしながら、永井自身を直に扱いていく。 服が汚れる事など構ってはいられない。 一旦萎えた永井自身は、すぐに固さを取り戻し、量は次第に減っていくもの簡単に勃起と放出を繰り返す。 「はぁああ…せん……せぇ……ぁ…うんんっっ…」 永井の心に羞恥心は消えていた。ただ欲望のままを喘ぎ、頭を掴んでいた手を背に廻し、愛しい人からのキスの雨を受け続けた。 この一条の硬い背の感触も匂いも吐息も口唇も手も全てが、恋しくて、夢中で腰をくゆらせた。 その退廃的で淫蕩な姿に一条は理性のたがが外れそうになるのを必死に耐え、永井の熱を出してやることだけに徹した。 このまま永井の中に自身を挿入する事は可能だが、こんな無意識に近い状態の永井と結ばれることは避けたかった。 やがて、薬の効果が切れ永井は蓄積した疲労に押し潰されるかのように一条の身体にしがみ付いたまま、意識を手放した。  車の中には、青臭い若い精の匂いが、充満した。二人とも汗と永井が放った精液で、ベタベタだ。 一条は、永井の頬に張り付いた髪を払いのけ、彼のシートベルトを掛けた後、運転席に戻った。 そして、すやすやと安堵しきった顔で、寝息を立てている永井をしばし見つめてから、車を走らせた。 

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