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第15話

 次の日、俺と慎吾は1限目からの講義で、まだ講義前のざわつく教室の一番後ろの席に座っていた。 「お前はまた寝不足なのか?」 ふぁと大きな欠伸をして机にうつ伏せた俺に隣から呆れたような声が聞こえた。 今日の寝不足は仕方ない。 慎吾に何て話そうかとか、いつも迷惑かけてる慎吾にこれ以上面倒かけてもいいものだろうかとか、断られたらどうしようとか、慎吾しか話せる相手が思い浮かばない俺が考えても答えが出るはずもなく、結果寝不足になるのは必然だろう。 「慎吾ぉ……話、たい、ことが……ある、んだけど」 「何だ?」 うつ伏せのままぼそぼそと独り言のように呟く俺の声に慎吾が聞き返した。 「あ、や、今じゃなくて、その、慎吾は今日何限まで?」 慌てて顔を上げてしどろもどろになりながら聞き返す。愛の告白をするわけでもあるまいし、何慌ててんだ俺。 「5限までだな」 慌てる俺を気にするでもなく冷静に返す。 本当慌てないよなこいつ。そういや俺、慎吾が慌てたとこ見た事ない気がするな。 あー……一度見たっけ、台風の日に寮の部屋の窓を閉め忘れて布団がずぶ濡れになった時。窓を閉めるのも忘れて、布団をひっくり返したり、ベッドの上で布団を絞ろうとしてみたり、動くはずもない打ち付けのベッドを窓から離そうとしてみたり。 慌てているというより、もはや挙動不審だった。 「大丈夫か、翔」 思い出し笑いに顔を緩ませている俺を慎吾が怪訝そうな顔で見ていた。 「大丈夫、俺今日18時までバイトだから、終わったら慎吾の家に行ってもいい?」 「それはいいけど、そのニヤけた顔キモイぞ」 「ひでぇ!」 そう言われても元凶が隣にいるんだから、俺の顔面の筋力が仕事放棄するのも仕方ない。

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