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第22話 SIDE江角慎吾
次の日、翔は学校に来なかった。
そういえば、バイトもなく久しぶり1日に休みだと喜んでいた翔を思い出した。
どうするか……。
感情の起伏が激しく、頼りなく見られがちだが、一度決めた事は貫き通す芯の強さが翔にはある。連絡がつかないのが気がかりではあるが……。
その時の俺は明日には来るだろうと漠然 と考えていた。
俺の予想に反して、次の日になっても翔の姿は学校になかった。
「何してる、翔……」
スマホからは、電波の届かない場所にあるか電源が――と機械の音声が冷たく聞こえてくる。次の授業まで後30分ほどの間に来るんじゃないかと、わずかな希望を抱きながら焦る気持ちを抑えた。
「――君、江角君」
顔を上げるとウェーブのかかったセミロングの女の子が俺の隣に立っていた。
「何?」
「江角君を呼んで欲しいって人が来てるよ」
彼女が指差す教室の入口に目をやると、遠目からでもわかるくらい不機嫌なオーラを出している五十嵐さんがいた。
「ありがとう」
彼女にお礼を言って、気乗りしない足取りで五十嵐さんの方へ向かった。
「翔は?」
俺が近付くと、それ以外は興味ないとばかりに手短に訊ねてくる。
「来てませんね」
俺も手短に返す。
この人、俺のこと嫌いだよな。昔から感情を表現することが苦手で、愛想がない自覚はあるが、この人の場合それだけじゃないっていうか……。
「昨日も来てなかっただろ」
腕を組みながら俺を見る目が苛立っていた。
「そうですね」
「ちょっと来い」
にこやかに会話が弾んでいるようには見えない俺達を教室の学生達にちらちら見られていたのが気になったのか、有無を言わさず歩き出す五十嵐さんに仕方なくついて行った。
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