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第24話 SIDE江角慎吾

 翔の家の前に着くとアパートの二階へ駆け上がった。 チャイムを鳴らしても反応はない。 遅れて来た五十嵐さんがドアノブを回すとカチャリとドアが開いた。 「翔!」 俺と五十嵐さんが部屋に飛び込むと、ベッドに横たわる翔が視界に入った。 ぴくりとも動かない翔を見て、俺はその場に立ち尽くした。 「翔!しっかりしろ!」 駆け寄った五十嵐さんが翔を抱え起こして叫んでいた。 カーテンが閉め切られた暗い部屋に生気のない翔の白い顔がやたら鮮明で、俺は激しい不安に襲われて立っているのがやっとだった。 五十嵐さんの声に反応した翔が、助けて、五十嵐とうわ言のように掠れる(かす)声で何度も呟いた。 「あぁ、助けてやる。お前を苦しめる全てのものから守ってやる。だからもう、何も心配するな」 五十嵐さんの優しく澄んだ声が震えていた。 「俺の家に連れて行く」 五十嵐さんが翔のスマホをポケットに入れながら、自分のスマホでどこかに電話をかけた。 「病院に連れて行った方が――」 「兄貴が医者だ。心配ない」 早口でそう言うと、繋がった相手と少し話して電話を切った。 「五十嵐さん!翔のこと、お願いします」 翔を抱きかかえる五十嵐さんに俺が頭を下げると柔らかな眼差しで翔を見つめながらゆっくり頷いた。

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